2013年11月16日土曜日

聴診の学習法

右記のリンクは、診断学の神様、ティアニー先生の新著。右胸心を「睾丸の診察によって診断できる唯一の先天異常」などのパールや聴診以外の診察所見、問診の仕方などのコツが満載である。付録のCD-ROMには先生御自身の心音の「口まね」の音声などが収録されている。ただ、動物の鳴き声も外国人と日本人には違うように聞こえるので、日本人の著者による「電子聴診器でぐんと身につく心音聴診技術: DVDで何度も聴けて音が見える新しい聴診学習法」 の赤石流擬声語で覚える心音のほうが、しっくり来るかもしれない。「〔3Mリットマン〕エレクトロニック ステソスコープ モデル3200 ブラック [ANRテクノロジー][電子聴診器]」の使い方にページを割いているのも嬉しい。

インターネットのサイトでは、次の2つがお薦め。双方ともにiPhone対応アプリを準備している。

2013年11月8日金曜日

BMI=25の体重

健診の結果で肥満の判定をする機会は少なくない。BMI(ケトレー指数)が計算されていれば、日本肥満学会による「肥満症の診断基準と治療ガイドライン」に順じ、BMI>25を1度肥満と判定することになる。

BMIが計算されていない場合、簡便法として、身長が2m以下の場合は、体重(kg)<身長(cm)-100であれば、25以下であることを知っておいて損はない。

もっと厳密にBMIが25のときの体重を計算したいときは、身長の半分の自乗の100倍で計算する。電卓では、身長の半分を入力して「××=」で2桁ずらすと体重が出るので、ちょっと楽になる。切れが良ければ、身長が1.6mなら64.0㎏、1.8mなら81.0㎏と、暗算でも大丈夫。

さらには、75~99の自乗の計算法「x^2 = (x+d)(x-d)+d^2」を知っておくと、偶数の身長の場合が、暗算で計算できるようになる。
75^2 = 100 × 50 + 25^2 = 5625   50^2 = 100 × 0 + 50^2 = 2500
76^2 = 100 × 52 + 24^2 = 5776   51^2 = 100 × 2 + 49^2 = 2601
77^2 = 100 × 54 + 23^2 = 5929   52^2 = 100 × 4 + 48^2 = 2704
78^2 = 100 × 56 + 22^2 = 6084   53^2 = 100 × 6 + 47^2 = 2809
79^2 = 100 × 58 + 21^2 = 6241   54^2 = 100 × 8 + 46^2 = 2916
80^2 = 100 × 60 + 20^2 = 6400   55^2 = 100 × 10 + 45^2 = 3025
81^2 = 100 × 62 + 19^2 = 6561   56^2 = 100 × 12 + 44^2 = 3136
82^2 = 100 × 64 + 18^2 = 6724   57^2 = 100 × 14 + 43^2 = 3249
83^2 = 100 × 66 + 17^2 = 6889   58^2 = 100 × 16 + 42^2 = 3364
84^2 = 100 × 68 + 16^2 = 7056   59^2 = 100 × 18 + 41^2 = 3481
85^2 = 100 × 70 + 15^2 = 7225   60^2 = 100 × 20 + 40^2 = 3600
86^2 = 100 × 72 + 14^2 = 7396   61^2 = 100 × 22 + 39^2 = 3721
87^2 = 100 × 74 + 13^2 = 7569   62^2 = 100 × 24 + 38^2 = 3844
88^2 = 100 × 76 + 12^2 = 7744   63^2 = 100 × 26 + 37^2 = 3969
89^2 = 100 × 78 + 11^2 = 7921   64^2 = 100 × 28 + 36^2 = 4096
90^2 = 100 × 80 + 10^2 = 8100   65^2 = 100 × 30 + 35^2 = 4225
91^2 = 100 × 82 + 9^2 = 8281    66^2 = 100 × 32 + 34^2 = 4356
92^2 = 100 × 84 + 8^2 = 8464    67^2 = 100 × 34 + 33^2 = 4489
93^2 = 100 × 86 + 7^2 = 8649    68^2 = 100 × 36 + 32^2 = 4624
94^2 = 100 × 88 + 6^2 = 8836    69^2 = 100 × 38 + 31^2 = 4761
95^2 = 100 × 90 + 5^2 = 9025    70^2 = 100 × 40 + 30^2 = 4900
96^2 = 100 × 92 + 4^2 = 9216    71^2 = 100 × 42 + 29^2 = 5041
97^2 = 100 × 94 + 3^2 = 9409    72^2 = 100 × 44 + 28^2 = 5184
98^2 = 100 × 96 + 2^2 = 9604    73^2 = 100 × 46 + 27^2 = 5329
99^2 = 100 × 98 + 1^2 = 9801    74^2 = 100 × 48 + 26^2 = 5476

2013年7月19日金曜日

8月5日からCOURSERAで医学教育の講義

来月5日から"Instructional Methods in Health Professions Education"という講義が始まります。シラバスは下記の通り。参考書も3冊挙げられています。Amazonへのリンクを張りましたが、いずれもKindle版があります。

1週目(8月5日): Adult Learning Theory
2週目(8月12日):  Intended Learning Outcomes
3週目(8月19日):  Instructional design and individual assessment
  • Multiple-choice question writing
  • Skill assessment
  • Oral presentations
  • Rubrics and standardization
4週目(8月26日):  Instructional techniques: Knowledge Transfer
  • Active learning in large lecture formats
  • Supportive questioning
  • “Big Ticket” technique
5週目(9月2日):  Instructional techniques: Skill Development
  • Simulation
  • Teaching with data
  • Clinical reasoning
6週目(9月9日):  Instructional techniques: Attitudes
  • Reflection
  • Feedback
  • Incorporating art, music, and theater
7週目(9月16日):  Instructional techniques: Teaching with technology
  • Large lecture formats
  • Synchronous vs. asynchronous formats
  • High fidelity clinical simulations
8週目(9月23日):  Application of instructional methods (capstone)
  • Within learners’ specific context
  • Sharing best practices with others

2013年7月13日土曜日

アナフィラキシー・ショックの易学

上記内容で書こうとしたら、統計データが見つからない!断片的に拾い集めて箇条書きにするとると、

  • 1995年~2001年の7年間で食物アレルギーの死亡例19例で、原因内訳は、ソバ、甘海老、チョコレート、マグロが1例ずつ、他不明。
  • 小中高での何らかのアレルギー有病率が、10〜20%程度、アナフィラキシー有病率が0.1〜0.3%程度。
  • FDEIA(food-dependent exercise-induced anaphylaxis)は、有病率0.01%程度。
  • 外因では、ハチ刺傷が多い。
  • 薬剤は、造影剤、人血小板濃厚液、オキサリプラチンなどが多い。

お粗末なデータしか集まらない。しかし、小児の食物アレルギーによる死亡はマスコミの印象よりも、はるかに少ないということはわかった。むしろ、それに比べ、家庭内事故による死亡件数のほうがはるかに多く、先進諸国の中で断トツで、保育内施設での死亡は世界で1番少ないという事実はあまり報道されない。そして、アナフィラキシーショックを現場でエピペンを打たずに搬送されてくる。吉と出るか凶と出るか、資力をつぎ込んで治療をしても、救命しそこねると訴訟になり得る。エビデンスのない特定検診に予算がつぎ込まれ、肝心な疫学データの収集はされていない。何か、日本の社会というものの歪みが透けて見える分野ですね。

参照

2013年7月12日金曜日

急性胃腸炎!と思ったら、SFTS?

NEJMの4月21日号で報告されたSFTSの国内死亡例が13例になったというニュースがあったので、まとめてみた。(まとめている途中で、山口県感染症情報センターのページにまとまっているのを発見…orz)

まとめてみての感想は、もし初診で来たら、まず見逃すだろうなということ。対策としては、50代以上の有熱胃腸炎例では、補液の際に血小板をチェックすることぐらいしか打つ手はないかな。
  1. 2012年秋、山口県の女性、発熱、嘔吐、下痢などの症状を訴え、約1週間後に死亡。 
  2. 2012年秋、愛媛県の成人男性に発熱、食欲低下、下痢が出現した。5日目に死亡。
  3. 2012年秋、宮崎県の成人男性に頭痛、発熱、下痢が出現した。その後脱力感と食欲低下が出現し、発症4日目にウイルス性腸炎の診断で入院となった。入院5日目に死亡。
  4. 2012年夏、広島県の成人男性が死亡。
  5. 2005年秋、長崎県の60歳代男性が死亡。
  6. 2013年4月初旬、鹿児島県の成人女性が死亡。
  7. 2012年6月、佐賀県の60代男性が死亡。
  8. 2013年4月上旬、山口県の60代女性が発熱、意識障害等で入院。約1週間で死亡。
  9. 2012年11月、高知県の60代男性が発熱と全身倦怠感により医療機関を受診。その後、全身症状が悪化し入院治療を行い、9日後に死亡。
  10. 2013年5月24日、愛媛県の90代女性が発熱や吐き気を訴え、医療機関を受診し、6月上旬に死亡。
  11. 2013年5月、高知県の70代男性が死亡。
  12. 2013年5月25日、熊本県天草市の86歳女性に食欲不振などが発症。26日に受診。27日に入院したが6月4日に死亡。
  13. 2013年7月上旬、岡山県の80代女性が死亡。
マダニ媒介性感染症には、他にも日本紅斑熱、Q熱、ライム病、ダニ媒介性脳炎などがあり、山に入るときは皮膚を露出しない、襟口をタオルで覆うなどの予防対策、それでも食われたときは虫体を毟らず医療機関を受診、さらに運悪く、その後体調を崩した時も早めに受診することを広く知らせる必要もある。

医療機関では、ダニツイスターを準備しておくと、除去は容易である。

2013年7月11日木曜日

「コウノメソッド」

「コウノメソッド」とは、名古屋フォレストクリニックの院長、河野和彦先生が提唱する認知症治療の極意。

著書を拝読した限りでは、患者や介護者の身になった治療方針やその経験と裏打ちする知識の深さには、ただ感服するばかりである。ただ、論の展開が性急で、語り口の断定調が、胡散臭さを醸し出している点が残念。

まずは、クリニックのホームページで要旨が公開されているので、試してみて、それぞれが判断するのがいいのかもしれない。参考として、御本人が何を重視されているか、コウノメソッド実践医加入条件を引用しておく。
【加入の条件】
実践医: 
  • パーキンソニズムのある患者には、アリセプトの少量投与が処方できる体制にあること(相対条件)。 少量投与できなければリバスタッチパッチなどを代わりに処方すること。
  • シチコリン注射を施行できる。フェルガード類の効果を否定しない。河野医師の処方が奏功している 患者が来院した場合、紹介状がなくてもその処方になるべく近いものを処方できる。 
協力薬剤師:
  • オーダーメイド処方の大切さを理解し、実践医と協調して難しい調合をすることができる。 抗うつ薬、リスパダールの怖さを理解している。 
協力看護師:
  • ニコリン注射の医師の指示のもとで打つことができる。地元から指示が出ない場合は、 河野和彦医師か もよりの実践医から指示を仰ぐ。
【加入後の権利】
  • 河野医師にメールか FAX で難治患者の診断、治療、調合などについての質問ができる。いつでも脱退できる。
参照:かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」 厚生労働省

2013年7月10日水曜日

2型糖尿病治療の課題と展望

上記タイトルの講演へ出掛けました。ポイントを箇条書きにすると、
  • HbA1cの目標は7.0%
  • 予後を改善するためには、癌死を減らすことが必要。
  • J-DOIT3の結果は2016年にオープンになるということ。
  • 日本人と欧米人の糖尿病は病態が異なり、老化によるDMはサルコペニア対策も同時に考慮すべきこと。
そんなお話でした。ついでに、ジペプチジルペプチターゼ(DPP)IV阻害薬の一覧をどうぞ。
  1. シタグリプチン(グラクティブ®/ジャヌビア®)
  2. ビルダグリプチン(エクア®)
  3. アログリプチン (ネシーナ®)
  4. リナグリプチン(トラゼンタ®)
  5. テネリグリプチン(テネリア®)
  6. アナグリプチン(スイニー®)
  7. サキサグリプチン(オングリザ®)

2013年7月9日火曜日

"No risk, no life."


医者として、「痩せろ、食べるな。」と葉っぱをかけることは多い。一方、在宅で高齢者を診ていると、明らかに食欲のある方のほうが元気だ。(元気だから食欲があるのかも知れない…)だから、高齢には、逆に「しっかり食べましょう。」と急かされることになる。食に関する指導に齟齬を生じることになるが、右の本では総死亡率曲線を援用して、その指導の変節点は70〜75歳が妥当ではないかと論じている。

体重のみをパラメータとすると、そうなのかもしれない。ところが、サルコペニアは「筋肉量の減少」、メタボリックシンドロームは「内臓脂肪の増加」なので、貯筋と減脂の両立は可能なわけだ。実際、サルコペニア肥満というのもある。ただ、体脂肪も筋肉量も正確な値を簡便に測定することは不可能であるため、体重であれこれ語ってしまうことになる。

最近は、信頼性に疑問符がつくものの、家庭用体重計でも体脂肪率が測定できる。これをもとに、除脂肪体重の半分が筋肉量と近似のもと体脂肪率を%Fとすると、下記の式が成り立つ。

筋肉重量/体脂肪重量 = (100 − %F) ÷ 2 × %F

概算式ではあるが、比較的容易に筋肉脂肪比が計算できる。この式の特徴は、体脂肪率のみのパラメータで、体重が関与しないことである。しかし、下記参考文献によると、体脂肪率は生命予後の予測因子としては、あんまりあてにならないようだ[1]。

結局は、BMIあたりを目安にして、食欲旺盛な時期は「過食せず」、食に対する執着が失せてきたら「食べる」という、悪く言うと天邪鬼、良く言うと中庸の食事指導が、今のところ、最善解とならざるを得ない。

医食同源とは宜なるかな、食べることはリスクであり、生きるエネルギー源でもあるのだ。

高齢者の食欲不振の原因の覚え方を附しておく。
"Meals on Wheels" [2]

  • Medication Effects 
  • Emotional Problems (Major Depression) 
  • Anorexia Nervosa or Alcoholism 
  • Late-life paranoia 
  • Swallowing disorders (See Dysphagia) 
  • Oral factors (e.g. Poorly fitting dentures) 
  • No Money 
  • Wandering (Dementia related behavior) 
  • Hyperthyroidism, Hyperparaythyroidism, Hypoadrenalism 
  • Enteric problems (e.g. Malabsorption) 
  • Eating problems (e.g. difficult self-feeding) 
  • Low salt diet or low Cholesterol diet 
  • Stones (Cholecystitis) or social problems (isolation)

文献
[1] Chantal Matkin Dolan, Helena Kraemer, Warren Browner, Kristine Ensrud, and Jennifer L. Kelsey. Associations Between Body Composition, Anthropometry, and Mortality in Women Aged 65 Years and Older. American Journal of Public Health: May 2007, Vol. 97, No. 5, pp. 913-918.
[2]Morley JE, Silver AJ. Nutritional issues in nursing home care. Ann Intern Med. 1995 Dec 1;123(11):850-9.

2013年7月8日月曜日

腰痛のRed Flags

診断で大事なのは、Red Flagsを見落とさないこと。下記の語呂合わせで覚えましょう。
TUNA FISH 
  • Trauma 
  • Unexplained weight loss 
  • Neurological signs 
  • Age 20歳未満55歳以上
  • Fever
  • Intravenous drug use 
  • Steroids for long time 
  • History of cancer
在宅においては、患者さん本人の他、介護者への配慮も必要になります。良質なエビデンスはないのですが、腰椎バンドの使用やボディメカニクスの理解が予防になる可能性があります。

2013年7月7日日曜日

重篤副作用一覧


重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療関係者向け)」を再構成したリンク集です。個人的な用途で作りましたが、折を見て更新します。

神経・筋骨格系
精神
感覚器

口腔
循環器
呼吸器
消化管・肝・膵
腎臓・泌尿器
代謝・内分泌
血液
皮膚
がん
  • 手足症候群:例)カペシタビン、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、フルオロウラシル、テガフール・ウラシル、ソラフェニブ、スニチニブ

2013年7月6日土曜日

認知行動療法

うつ病の非薬物療法の一つに、認知の歪み(cognitive distortion) を正す認知行動療法がある。最近は、マインドフルネスとアクセプタンスなどと仏教の焼き直しみたいな様相を呈していますが、一世代前のデビッド・D・バーンズは、10種類の認知の歪みを挙げています。
  1. 全か無か思考(all-or-nothing thinking) よくイデオロギー闘争のスローガンなどに見られる二者択一思考である。有名なものにPatrick Henryの"Give me liberty, or give me death!"などの言葉があります。Polarized Thinking、“Black and White” Thinking、二分法思考(dichotomous thinking)、悉無律などとも呼ばれます。しかし、実際の世の中は割り切れず、ミスチルのGIFTじゃないけど「白と黒のその間に無限の色が広がってる」わけです。
  2. 過度の一般化(over-generalization) "Never twice without thrice."(2度あることは3度ある)とは言いますが、1,2度失敗したからって、自分は失敗しかしないんだと一般化する必要はありません。エジソンのように“I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work.”と開き直ることが肝要です。
  3. 心のフィルター(mental filter) "Is the glass half empty or half full?"(コップは半分入ってるのか半分からなのか?)という有名な質問があります。同じ状態でも、人によって見方が変わってくるものです。
  4. 拡大解釈と過小評価(magnification and minimization) "Make a mountain out of a molehill"(もぐら塚から山を作る)という言葉があります。大袈裟に言う事の比喩ですが、自分について短所を拡大解釈したり、長所を過小評価したりは精神衛生上良く有りません。むしろ、Illusory superiority、above average effect、superiority bias、leniency error、sense of relative superiority、the primus inter pares effect、the Lake Wobegon effectなど色々な名称がありますが、世の中の大半の人が平均以上に優秀と思っているそうで、そのくらい自信過剰なくらいが、調度よいのかもしれません。
  5. 感情的決め付け(emotional reasoning) 感じたことを事実と思ってしまうこと。
  6. マイナス化思考(disqualifying the positive) 自分にとってよいことも裏を勘ぐってマイナスのことに考えてしまうこと。天邪鬼な皮肉屋さんてところでしょうか。 
  7. 結論の飛躍(jumping to conclusions)相手のことを読み過ぎたり(mind reading) 未来のことを予測(the fortune teller error) したりして、それを事実と思い込み、空回りすること。 
  8. すべき思考(should statements)物事をするときに、「~すべき」、「~しなければならない」という強迫観念に似た切迫感や焦燥感に駆られてしまうこと。Albert Ellisは"masturbation"に擬えて"musturbation"と呼んだ。その程度を和らげて、「~したらまし」といった具合に解釈するのがましで、さらには「~したい」と外部強制的でない内面的な動因の高まりへの置き換えです。 
  9. レッテル貼り(labeling and mislabeling) シェークスピアの「ハムレット」に"Frailty, thy name is woman."(弱き者、汝の名は女なり)という言葉がありますが、自分で自分のことを負け犬、負け組、落伍者などのレッテルで自分を括ってしまうこと。
  10. 個人化(personalization)  "Remorse is lust's dessert."(自責は欲望の次)という諺の言うとおり、通常は、食欲、睡眠欲、性欲など基本的な欲求が満たされないと、他人に対する思いやりや自己反省などの余裕はないのが普通です。しかし、大切な人を失うなどのストレス下では無用な自責の念に苛まされることがあります。この過度の自責を個人化と言うそうです。
と書いていて、うつ病の方は基本的に無力な自意識過剰状態にあるのかもしれないと思いました。社会における"one of them"感の喪失と言い換えてもいいかもしれません。そして、自己に執着して、意識上の人間の数 n が少なくなると、正規分布的な考え方が二項分布的になってしまうのも仕方が無いかもしれません。しかし、これは病気の原因なのか、それとも結果なのか難しいところです。老化により世間とのチャンネルが減ることや痛みにより「今、ここ」に繋ぎ止められることが、うつの引き金になるのももっともなことです。そして、認知行動療法が、無我を謳う禅宗に近づいていくのも納得が行くのです。

2013年7月5日金曜日

EBMの復習

紛らわしいEBMの公式をまとめておきます。
疾患あり疾患なし合計
検査陽性真陽性(a)偽陽性(b)a+b
検査陰性偽陰性(c)真陰性(d)c+d
合計a+cb+da+b+c+d
  • 感度(sensitivity) = 真陽性率 = a/a+c
  • 特異度(specificity) = 真陰性率 = d/b+d
  • 有病率(prevalence) = a+c/a+b+c+d
  • 正確度(accuracy) =  a+d/a+b+c+d
  • 偽陽性率(false positive) = type I error = b/b+d
  • 偽陰性率(false negative) = type II error = c/a+c
  • 陽性的中率(positive predictive value) = a/a+b
  • 陰性的中率(negative predictive value) = d/c+d
  • 陽性尤度比(positive likelihood rate) = 感度/(1-特異度)
  • 陰性尤度比(negative likelihood rate) = (1-感度)/特異度

2013年7月4日木曜日

薬疹の分類


  1. 固定薬疹:解熱鎮痛消炎剤、抗菌薬、睡眠剤、抗痙攣薬、精神神経用薬、下剤(同じ部位に繰り返しできる。多くは色素沈着を残す。時に水疱をみる。) 
  2. 蕁麻疹型:抗菌薬、解熱鎮痛剤、局所麻酔剤、造影剤(薬剤を使用して数分以内に現れる。時にショック症状。) 
  3. 播種性紅斑丘疹型(麻疹・中毒疹型):抗菌薬、睡眠剤、解熱鎮痛剤、 抗リウマチ薬、精神神経用剤、利尿剤(ほぼ全身均等に紅斑、丘疹が出る。)
  4. 湿疹型:抗真菌剤、 消毒剤、抗菌薬、 化学療法剤、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤(接触性皮膚炎の様な多彩な皮疹、かゆみが強い、リンパ腺腫大。 パッチテストで陽性が出やすい。) 
  5. 紅皮症型:リウマチ治療薬、抗菌薬、睡眠剤、解熱鎮痛剤、痛風治療剤、精神神経用剤、利尿剤(全身が赤くなり、落屑。肝臓、腎臓障害を伴うことがある。)
  6. 多形紅斑型:抗菌薬、解熱鎮痛剤、睡眠剤、ワクチン(滲出性の紅斑がたいてい左右対称に出る。)
  7. 粘膜皮膚眼症候群型:抗菌薬、解熱鎮痛剤、睡眠剤、ワクチン(多形紅斑の皮疹の他に眼瞼、外陰部、口唇にもびらん、紅斑などが出る。 )
  8. 中毒性表皮壊死剥離型(TEN):抗菌薬、解熱鎮痛剤、睡眠剤、痛風治療剤、抗痙攣薬(死亡率が高い。薬剤摂取後、急に発熱、倦怠感、リンパ腺の 腫脹などを伴い、紅斑、水疱、表皮剥離が体の広い 範囲に生じる。早急な入院治療が必要。 初期の鑑別に咽頭の発赤が参考になる。)
  9. acute generalized exanthematous pustulosis (AGEP):抗菌薬、非ステロイド系消炎剤(間擦部に生じる紅斑、多数の無菌性膿疱を認める。 症状や検査所見は重症を思わせるが、予後は良好なことが多い。)
  10. (扁平)苔癬型:降圧剤、利尿剤、精神神経用剤、不整脈治療剤、手背、両上肢の日光に当たる部位に初発することが多い。(かゆみが激しい。 発病まで数ケ月かかることもしばしばである。) 
  11. 水疱型:睡眠剤、化学療法剤(固定薬疹、多形紅斑型、粘膜皮膚眼症候群型、TENの症状の初期症状と鑑別が重要。 )
  12. 紫斑型:リウマチ治療薬、抗菌薬、睡眠剤、解熱鎮痛剤、痛風治療剤、精神神経用剤、抗癌剤、利尿剤(血液障害による場合と血管壁の障害による場合がある。)
  13. 色素沈着型:経口避妊薬、降圧剤、抗癌剤、精神神経用剤(メラニン色素や薬剤その物の色。)
  14. 痤瘡型:副腎皮質ホルモン、抗結核剤、睡眠剤(背部に多い。時に顔面。)
  15. 光線過敏型:抗菌薬、利尿剤、糖尿病剤、精神神経用剤(顔面、頚部、手から上肢などの日光にあたる部位にできる。 色素沈着や白斑を残すことがある。) 
  16. 結節性紅斑型:抗菌薬、経口避妊薬(下腿伸側の有痛性の紅斑、しこり。 )
  17. SLE型:降圧剤、抗不整脈薬、抗痙攣剤、抗菌薬発熱(リンパ腫大、関節痛などを伴う。 )
  18. 脱毛:抗癌剤 エトレチネート、抗甲状腺剤(主に頭髪。)
  19. 多毛:副腎皮質ホルモン、抗痙攣剤(四肢、体幹時に顔面。) 
  20. 乾癬様皮疹:βブロッカー
  21. 角化異常:砒素(以外に多く、掌蹠に角化が起こる。)

2013年7月3日水曜日

高血圧診療の話題

新札幌循環器セミナーの上記タイトルの講演会へ出かけた。副題は、〜高血圧診療ガイドラインの改定を前にして〜ということだった。一般医科は、例の件のせいかどうか知らないけれど、ガイドラインに関心がないのか、出席者が少ないように感じた。しかし、主な内容は、端野壮瞥町研究をもとにしたお話で、非常に面白かった。JSH2009から血圧とリスクファクターで層別してリスク分類がされたが、その根拠が示されたり、脈拍の速い群で食塩感受性が高いことが示されたり、大変有意義なお話でした。

尿中塩分の簡易測定器があるというのも初耳で、早速調べてみると、「減塩モニタ」なるものがありました。

ここで近年矢継ぎ早に上市されたARBを復習しておくと、
  • ロサルタン(商品名:ニューロタン®) 
  • バルサルタン(商品名:ディオバン®) 
  • カンデサルタン・シレキセチル(商品名:ブロプレス®) 
  • テルミサルタン(商品名:ミカルディス®) 
  • オルメサルタン メドキソミル(商品名:オルメテック®) 
  • イルベサルタン(商品名 アバプロ®/イルベタン®)
例の件の詳細は、参考文献をどうぞ。

2013年7月2日火曜日

心房細動メモ

リスク評価

  • CHADS2スコア: CHF, HT, Age, DM, Stroke
  • CHA2DS2-VAScスコア: CHF, HT, Age, DM, Stroke, Vascular disease, Age, Sex category
  • HAS-BLEDスコア: HT, Abnormal renal/liver function, Stroke, Bleeding, Labile INRs, Elderly, Drugs/alcohol

抗凝固薬

  • warfarin
  • プラザキサ(ダビガトラン)
  • イグザレルト(リバロキサバン)
  • リクシアナ(エドキサバン)
  • エリキュース(アピキサバン)

症状除去

  • リズムコントロール 不要だが、患者の希望で行う場合、腎排泄で半減期の短いサンリズムと肝代謝で半減期の長いアスペノンあたりを知っておく。
  • レートコントロール 110bpm程度で
  • カテーテルアブレーション 効果は慢性で60%、発作性で90%程度。1/1000の死亡リスクに見合うか?

参照

2013年7月1日月曜日

プライマリ・ケア医のためのうつ病診療講座

シオノギ製薬(4507)のMRさんが持って来てくれていた「プライマリ・ケア医のためのうつ病診療講座」を本日視聴。箇条書きでメモ。

2013年6月30日日曜日

かぜと"かぜ"のように見える重症疾患

しばらく放ってあった「“かぜ”と“かぜ”のように見える重症疾患/ケアネットDVD 」のDVDを観ました。メモと感想。

  • 次の文献は必読:症例とQ&Aで学ぶかぜ症候群の診療―ガイドラインをめぐって―“かぜ”症候群の病型と鑑別疾患 著者:田坂佳千 (田坂内科小児科医院) 資料名:今月の治療 巻:13 号:12 ページ:1217-1221 発行年:2006年01月23日
  • 風邪は基本的に除外診断だが、除外すべき疾患が稀なこと、プライマリのセッティングでは疾患が熟していないことに診断の困難性がある。
  • 患者さん自身にいつもの風邪とどう違うか尋ねる。
  • 熱のみの所見で、安易に抗菌薬処方やラベリングをしない。(安易に風邪とは診断せずに、Acute Undifferentiated Feverとでもしておく。AUFには、Wiedersehenがつきもの…)
  • Centor基準:Fever, no Cough, Anterior Lymphadenopathy, Tonsilitis (FouCAuLT)→3点以上で迅速検査陽性か4点以上でアモキシリン(伝染性単核球症が除外出来れば…)
  • 咽頭痛のRed Flag:嚥下障害、開口障害、Tripod position
  • 喉頭軟線撮影:読影は、vallecula signに注意。(参照:Test Your Skill In Reading Pediatric Lateral Necks Radiology Cases in Pediatric Emergency Medicine
  • 現時点では、プロカルシトニンは迅速で結果が出ないので、有用性は限られる。
端折ったメモなので、私とコンテキストを共有する方にしか役立たないかも。非常にオーガナイズされた講演で、お薦めです。もう少し身体所見について踏み込んで頂ければ死角はないかと。でも、やはり、「さっきから熱が出ました」という方や「さっき1回吐きました」という患者さんが多いセッティングでは限界があります…orz 

2013年6月29日土曜日

Experience Based Medicineの陥穽

Wikipediaによると、伝説の医師会長武見太郎氏は
「(医師の集団は)3分の1は学問的にも倫理的にも極めて高い集団、3分の1はまったくのノンポリ、そして残りの3分の1は、欲張り村の村長さんだ」
と嘆いたという。これが事実だとして、3軒ドクターショッピングをしたとすると、サイコロを振って5や6が出る確率で名医、3や4が出る確率で凡医、1や2が出る確率で村長さんに当たることになります。樹形図を書いてみれば一目瞭然ですが、1回も村長さんに当たらない確率が8/27、1回当たる確率が12/27、2回当たる確率が6/27、3回とも当たってしまう確率が1/27となるわけです。7/27の方が当たりが悪いわけで、医者ってのは、大半は村長さんだと思かもしれません。逆に8/27の方がマスコミが言うのとは違って村長さんはいないと思うかもしれません。しかし、実際には、この過半数を超える方々の判断は事実とは異なってしまうのです。

実際、3例くらいのサンプルでは、その中にまともな医者がゼロだったとしても、その95%信頼区間は、0-1.0としか言えないわけです。(cf. wikipedia "Rule of tree"

そんな少ない経験に即した判断の陥穽を避けるためのツールが、悪名高い「偏差値」のもととなった正規分布なのです。大雑把に言って、偏差値70以上と30以下は2.5%ずつ、60-70と30-40は16%ずつ、残る40-60は63%という訳です。

2013年6月28日金曜日

食事療法、カロリス?それともローカーボ?


サーチュイン遺伝子、PPARγなど基礎医学的な部分も明らかになってきているが、カロリー制限と糖質制限、どちらが優れたダイエットなのかは、controversialである。

カロリー制限(食品交換表)

  • 摂取カロリー=標準体重×仕事量(軽労作25-30、中等度労作30-35、重労働35-)
  • 80kcal=1単位、つまり炭水化物、タンパク質は80gで1単位、脂質は9gで1単位。
  • ご飯1膳、りんご1個、バナナ1本が1単位。
  • 1コメ、2ニホンナシ、3秋刀魚、4ヨーグルト、5胡麻油、6緑野菜

糖質制限(カーボカウント)

  • まずは、定義:糖類<糖質<炭水化物。アサヒビールのサイトを参照。
  • Ⅰ型糖尿病では糖質1gで血糖5㎎/dl上昇、Ⅱ型糖尿病では糖質1gで血糖3㎎/dl上昇。
実際、同じ食事を一生続けるなんてのは、非現実的。その方の生活、仕事に合わせて、極端に陥ることなく、それぞれのよいところを組み合わせて指導するというのが落とし所。


参照

2013年6月27日木曜日

オピオイドローテーション

右掲本は、「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)」としてオンライン公開されている。
などの薬が、今後どのような位置づけになっていくのであろうか。楽しみである。

WHOの除痛ラダーとして有名な非オピオイド、弱オピオイド、強オピオイドと3段階の一段目の非オピオイドの代表薬であるアセトアミノフェンも容量拡大になっている。オピオイドを使用していて、充分に効果があったのに効果が減弱してきた場合、耐え難い副作用の出現で、オピオイド・ローテーションが必要になる場合がある。ガイドラインの換算表に応じて投与量を決め、下記の点にも注意を払う必要がある。
  • オキシコドン、フェンタニルからモルヒネに変更する場合、腎機能障害のある患者では副作用を生じる場合があるため、少量を投与して十分に観察する。 
  • モルヒネからフェンタニルへの変更では腸蠕動の亢進が起こることが多いため、緩下薬の減量などが必要なことがある。

2013年6月26日水曜日

片頭痛診断メモ

有病率の高い病気なのだが、みなさん、脳外科などへまず行かれるのか、一般医のところで診る機会は意外に少ない。ゴッホの「星月夜」とか、芥川龍之介の「歯車」とかで前兆の閃輝暗点(Scintillating Scotoma)が描かれている。(下の動画も参照してください。)


このように特徴的な症状があれば診断は困難ではないのですが、前兆のない片頭痛は以下の「5, 4, 3, 2, 1基準」で診断される。

  • 5回以上の発作 
  • 4時間から3日に渡る発症持続 
  • 拍動性(Pulsating)、片側だけの発症(Unilateral)、中程度から激しい(Moderate or severe)程度の痛み、日常的な身体動作の回避やそれによる症状悪化(Aggravation by or causing Avoidance of routine physical Activity)のPUMAの4項目うち2つ以上当てはまる 。
  • 吐き気(Nausea)や嘔吐(Vomiting)、羞明(Photophobia)、音声恐怖(Phonophobia)のうち1つ以上当てはまる 。

"Pulsating, duration of 4–72 hOurs, Unilateral, Nausea, Disabling"の略であるPOUNDingという簡略した記憶法もある。上の5つの基準のうち4つが合致した場合、その片頭痛の診断における陽性尤度比は24となる。頭痛の経過を判定するには、頭痛ノートが有用だが、スマホが普及した現在、例えば、株式会社プラスアールで開発したアプリなども便利である。

参照

2013年6月25日火曜日

ワクチンについて

右掲本では、予防接種に関し、丸々一章を割いて詳しく説明している。恥ずかしながら、莢膜多糖体の免疫原性は2歳未満で弱いことなど、はじめて知った。発達免疫学について教科書を読み直さなければ…他にも、効果や副反応にはじまり、スケジュールがずれたときの対応、保存方法など痒いところに手が届いた記述があるので参照して欲しい。

ここでは、本当に基本的なところを確認しておく。まず、スケジュールに関しては、下記のリンクが有用。


さらに、何が生ワクチンということも大切。次のワクチンまで空けなければならない期間や接種回数が異なってくるからだ。空ける期間に関しては、不活化ワクチンの場合1週間なのに対し、生ワクチンの場合4週間となる。生ワクチンの語呂合わせ例を示す。
憖っか(なまじっか)な風水マシン欠格ポリを追う。
生・耳下・風・水・麻疹・結核・ポリオ・黄
参照:2012年改訂版保育所における感染症対策ガイドライン

2013年6月24日月曜日

主治医意見書

特定疾患一覧
  1. がん末期
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病)
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準
ランク J:何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
1.交通機関等を利用して外出する
2.隣近所へなら外出する
ランク A:屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない
1.介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2.外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
ランク B:屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
1.車いす(wheelchair)に移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
2.介助により車いすに移乗する
ランク C:1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
1.自力で寝返り(roll-over)をうつ
2.自力では寝返りもうたない

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準
ランク Ⅰ :何らかの認知症 を有するが、日常 生活は家庭内及 び社会的にほぼ 自立している。 在宅生活が基本であり、一人暮らしも可能である。相談、指導等を 実施することにより、症状の改善や進行の阻止を図る。 具体的なサービスの例としては、家族等への指導を含む訪問指導や 健康相談がある。また、本人の友人づくり、生きがいづくり等心身の 活動の機会づくりにも留意する。
ランク Ⅱ :日常生活に支 障を来たすよう な症状・行動や 意思疎通の困難 さが多少見られ ても、誰かが注意 していれば自立 できる。
Ⅱa 家庭外で上記 Ⅱの状態がみら れる。 たびたび道に迷うとか、買 物や事務、金銭管理等それま でできたことにミスが目立つ 等
Ⅱb 家庭内でも上 記Ⅱの状態がみ られる。 服薬管理ができない、電話 の応対や訪問者との対応等一 人で留守番ができない等 在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難な場合もあるので、訪 問指導を実施したり、日中の在宅サービスを利用することにより、在 宅生活の支援と症状の改善及び進行の阻止を図る。 具体的なサービスの例としては、訪問指導による療養方法等の指導、 訪問リハビリテーション、デイケア等を利用したリハビリテーション、 毎日通所型をはじめとしたデイサービスや日常生活支援のためのホー ムヘルプサービス等がある。
ランク Ⅲ :日常生活に支 障を来たすよう な症状・行動や 意思疎通の困難 さが見られ、介護 を必要とする。
Ⅲa 日中を中心と して上記Ⅲの状 態が見られる。 着替え、食事、排便、排尿 が上手にできない、時間がか かる。 やたらに物を口に入れる、 物を拾い集める、徘徊、失禁、 大声、奇声をあげる、火の不 始末、不潔行為、性的異常行 為等 日常生活に支障を来たすような行動や意思疎通の困難さがランクⅡ より重度となり、介護が必要となる状態である。「ときどき」とはどの くらいの頻度を指すかについては、症状・行動の種類等により異なる ので一概には決められないが、一時も目を離せない状態ではない。 在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難であるので、訪問指導 や、夜間の利用も含めた在宅サービスを利用しこれらのサービスを組 み合わせることによる在宅での対応を図る。 具体的なサービスの例としては、訪問指導、訪問看護、訪問リハビ リテーション、ホームヘルプサービス、デイケア・デイサービス、症 状・行動が出現する時間帯を考慮したナイトケア等を含むショートス テイ等の在宅サービスがあり、これらを組み合わせて利用する。
Ⅲb 夜間を中心と して上記Ⅲの状 態が見られる。 ランクⅢa に同じ
ランク Ⅳ :日常生活に支 障を来たすよう な症状・行動や 意思疎通の困難 さが頻繁に見ら れ、常に介護を必 要とする。 ランクⅢに同じ 常に目を離すことができない状態である。症状・行動はランクⅢと 同じであるが、頻度の違いにより区分される。 家族の介護力等の在宅基盤の強弱により在宅サービスを利用しなが ら在宅生活を続けるか、または特別養護老人ホーム・老人保健施設等 の施設サービスを利用するかを選択する。施設サービスを選択する場 合には、施設の特徴を踏まえた選択を行う。
ランク M 著しい精神症 状や周辺症状あ るいは重篤な身 体疾患が見られ、 専門医療を必要 とする。 せん妄、妄想、興奮、自傷・ 他害等の精神症状や精神症状 に起因する周辺症状が継続す る状態等 ランクⅠ~Ⅳと判定されていた高齢者が、精神病院や認知症専門棟 を有する老人保健施設等での治療が必要となったり、重篤な身体疾患 が見られ老人病院等での治療が必要となった状態である。専門医療機 関を受診するよう勧める必要がある。

参考:主治医意見書記入の手引き

2013年6月7日金曜日

【本】東大がつくった高齢社会の教科書

タイトルに敢えて「東大が作った」という言葉を入れることで、それに誘われる読者層の獲得しようとしたことが想像される。しかし、その内容はいたって硬派。幅広い人に真剣に高齢社会を考えて欲しいという執筆者の危機感が感じられる。この本を教科書とした第一回高齢社会検定試験の開催も、そのような危機感からくるものでしょうか。

具体的な本の紹介については、車輪の再発明は避けて、目次は新元社のサイトを、書評については、ニッセイ基礎研究所の発行の解説をご覧ください。

蛇足ながら、個人的な感想を付け加えると、各医療機関が患者としての高齢者のみならず、地域社会にアプローチする部門及びそのための資源(人材、予算)の投入が早急に必要であろうということ。