医者として、「痩せろ、食べるな。」と葉っぱをかけることは多い。一方、在宅で高齢者を診ていると、明らかに食欲のある方のほうが元気だ。(元気だから食欲があるのかも知れない…)だから、高齢には、逆に「しっかり食べましょう。」と急かされることになる。食に関する指導に齟齬を生じることになるが、右の本では総死亡率曲線を援用して、その指導の変節点は70〜75歳が妥当ではないかと論じている。
体重のみをパラメータとすると、そうなのかもしれない。ところが、サルコペニアは「筋肉量の減少」、メタボリックシンドロームは「内臓脂肪の増加」なので、貯筋と減脂の両立は可能なわけだ。実際、サルコペニア肥満というのもある。ただ、体脂肪も筋肉量も正確な値を簡便に測定することは不可能であるため、体重であれこれ語ってしまうことになる。
最近は、信頼性に疑問符がつくものの、家庭用体重計でも体脂肪率が測定できる。これをもとに、除脂肪体重の半分が筋肉量と近似のもと体脂肪率を%Fとすると、下記の式が成り立つ。
筋肉重量/体脂肪重量 = (100 − %F) ÷ 2 × %F
結局は、BMIあたりを目安にして、食欲旺盛な時期は「過食せず」、食に対する執着が失せてきたら「食べる」という、悪く言うと天邪鬼、良く言うと中庸の食事指導が、今のところ、最善解とならざるを得ない。
医食同源とは宜なるかな、食べることはリスクであり、生きるエネルギー源でもあるのだ。
高齢者の食欲不振の原因の覚え方を附しておく。
"Meals on Wheels" [2]
- Medication Effects
- Emotional Problems (Major Depression)
- Anorexia Nervosa or Alcoholism
- Late-life paranoia
- Swallowing disorders (See Dysphagia)
- Oral factors (e.g. Poorly fitting dentures)
- No Money
- Wandering (Dementia related behavior)
- Hyperthyroidism, Hyperparaythyroidism, Hypoadrenalism
- Enteric problems (e.g. Malabsorption)
- Eating problems (e.g. difficult self-feeding)
- Low salt diet or low Cholesterol diet
- Stones (Cholecystitis) or social problems (isolation)
文献
[1] Chantal Matkin Dolan, Helena Kraemer, Warren Browner, Kristine Ensrud, and Jennifer L. Kelsey. Associations Between Body Composition, Anthropometry, and Mortality in Women Aged 65 Years and Older. American Journal of Public Health: May 2007, Vol. 97, No. 5, pp. 913-918.
[2]Morley JE, Silver AJ. Nutritional issues in nursing home care. Ann Intern Med. 1995 Dec 1;123(11):850-9.
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