2011年12月28日水曜日

高齢者にやさしい診療所ツールキット

今週の勉強会は、WHOによる"Age-friendly Primary Health Care (PHC) Centres Toolkit"の和訳(右掲書)の解説でした。限られた時間でしたので、リハビリ科の先生に、その背景、総合評価、ケアコーディネータ、予約システム、ユニバーサルデザイン(UD)について抜粋して講義して頂きました。特に総合評価から4つの「老年医学の巨人」ー物忘れ、うつ、尿失禁、転倒ーを適切に汲み上げることが強調されました。
個人的には、往診や在宅診療の記載がなかったのが不思議だったのですが、そのものは日本のように高度にインフラが整備された国でのみ可能なことなので、省かれたのかもしれないとのことでした。

本ツールキットの内容からは離れるのですが、例えば、転倒から大腿骨頚部骨折に至った場合は、一般的な悪性腫瘍よりも予後が悪いと言われてます。その問題解決には、認知機能、知覚の問題、運動器、栄養状態、多剤服用などが複雑に絡んでおり、チームによるシステム思考が要求される分野であり、対策は非常に個別性の高いものになるはずです。無理に一般化を推し進めると、前がん状態に準えて表現すれば、前転倒状態とも言える概念に、運動不安定症、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、サルコペニアなど次々と新しいものが提唱されているように混乱を極めた状態に陥ってしまいます。また、医師不足から来る医療機能の集約化は、高齢化に伴う患者の移動困難に相反する流れで、これからますます医療の網の目から漏れてしまう高齢者が増えていくように思うのが杞憂であってくれればよいのですが。