2011年1月に開催された日本医療メディエータ協会の年次総会で取り上げられ、今後医療安全の分野で広がっていくと思われるが、総会ではさわりの紹介に限られ、内容について詳細は明らかにされず、有料セミナーの内容は公開されていない。名称の宣伝とセミナー参加への誘導が現時点での戦略のようだ。
以前から民医連の施設ではFaculty Developmentにチーム医療が挙げられ、実践されてきたが、具体的なエビデンスに基づいたり、発信する機会が少なかった。エビデンスに裏付けられて構成されているチームSTEPPSは、我々の実践を省みて成文化するモデルになり得る。
まずは、AHRQ初代所長Dr. John Eisenbergの言葉、"Improving patient safety is a team sport." (患者の安全を改善するのはチームスポーツである。)をチームメンバーが肝に銘じる必要がある。そして、自分を含めメンバーの能力、状況を目配り(Situation monitor)し、思いやること(Mutual support)、声掛け(Communication)をすること、それにリーダーシップを加えた4つのコンピテンシーがチームSTEPPSの核となっている。
1.リーダーシップ
- リソースマネジメント:チーム内で作業量の偏りがないように調整する。
- 委任(Delegation):1)何を 2)誰に 3)明確な目標 4)フィードバックの指示(GTDの"Do it, delegate it, defer it or drop it."のDelegateの具体的方法)
- 業務前・中・後に行う打ち合わせ、進捗確認、振り返りのミーティング(業務中のハドルは、アメフトの試合途中で円陣を組んで行う作戦の打ち合わせの意味)
- コンフリクトの解決
- 状況認識:STEP(Status of the patient, Team Members, Environment, Progress toward goal)
- 相互モニター:I'M SAFE(Illness, Medication, Stress, Alcohol and Drug, Fatigue, Eating and Elimination)
- 作業支援
- フィードバック
- 患者擁護と主張
- 2回チャレンジルール:主張は退けられても2回はすることが個人の責任。
- 主張の強度:CUS(Concern, Uncomfortable, Safe issue)
- 角の立たない進言の方法:DESCスクリプト(Describe, Express, Suggest, Consequence)
- 協同
- 緊急情報の伝達:S-BAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation and Request)
- コールアウト(声出し確認)
- チェックバック(再確認)
- 引き継ぎ:I PASS the BATON(Introduction, Patient, Assessment, Situation, Safety, Background, Actions, Timing, Ownership, Next)
安全文化醸成を根付かせる8つのステップ
- チームに緊迫感をつくる
- 誘導チームをつくる
- ビジョンと戦略を練る
- メンバーの理解と受け入れを促す
- 他者へのエンパワメントを図る
- 短期的な成功を獲得する
- 減速させないで継続する
- 新しい組織文化を醸成する
Eisenberg氏の言葉で始まり、Icebergの話で終わるレジメでした。
参考文献
- 医療安全 7(2), 38-44, 2010-06 チームとしてのよりよいパフォーマンスと患者安全を高めるためのツールと戦略 (チームSTEPPS 日本の医療施設でどう応用するか?)
- エキスパートナース 2010年11月号 第2ステージに入った医療安全対策最前線 輸液・感染リスクマネジメントの具体的進め方[第2回] 医療安全の推進・質の向上に成果を上げる“チームSTEPPS”と有効なコミュニケーション・ツール
- Medsafe.Net TeamSTEPPS チームのパフォーマンスを高めるコミュニケーションの向上
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