2010年4月28日水曜日

アウトドアでのサバイバル ー自然の中での生き残り術ー

第9回日本旅行医学会参加の報告です。本学会がモデル学会としているWilderness Medical Societyでベスト指導者賞を受賞されている元米国空軍サバイバルトレーニング教官Peter Kummerfeldt先生の講演がありました。先生は、OutdoorSafeというホームページを開設されています。
 講演の中では、準備の重要性と臨機応変な危機対応力、生き抜くという強い意志、楽観的な考え方を強調されておりました。特に最後のものは「夜と霧」の著者ヴィクトール・フランクルも、逆境においてこそユーモアが必要というようなことを書いていたように記憶する。
 準備においては、予想外の一夜を戸外で過ごさなければならないかもという思考実験が重要。何もアドベンチャー旅行でなくとも、都内で直下型の地震が起こり、交通機関が麻痺してしまったとか、田舎道を走行中、吹雪で立ち往生してしまうとかのケースが想定できる。ありそうなシナリオについてイメージトレーニングしておくとよい。
 実際に必要になるスキルは、シェルター(保温、乾燥、防風)、火を起こす、救難信号を送る、水の確保、外傷の手当てなどで、繰り返し訓練しておく必要がある。例えば演者の先生のサイトで通信販売しているサバイバルキットには、以下のものが入っている。
  • コーデュラポウチ
  • プラスチック・オレンジ・ポンチョ
  • マグネシウム・ファイアスターター
  • 防水マッチケース
  • シグナルミラー
  • ホイッスル
  • フラッギング・テープ
 ファイアスターターやシグナルミラーなどは使うのにちょっとしたコツがいるので、子供にもその使い方を教えておく必要がある。それぞれ100円ライターやCDの裏などで代用してもよいかもしれない。ポンチョがオレンジなのはオレンジ色が一番発見されやすい色であるからとのこと。
 子供は、はぐれると父母に叱られると思って探そうとしてますます困難に嵌ってしまうケースが多いので、普段から迷子になってしまったら、動かないこと、知らない人にでも声をかけて救いを求めることを教えておく必要がある。

2010年4月14日水曜日

高齢者総合機能評価

下記資料をもとに高齢者の総合的機能評価の講義であった。ガイドラインに挙げられているCGA7を引用すると、
高齢者総合的機能評価簡易版(CGA7)
  1. 意欲(Vitality Index):外来または診察時や訪問時に、被検者の挨拶を待つ自分から進んで挨拶をする=○返事はするまたは反応なし=×
  2. 復唱(HDS-R):これから言う言葉を繰り返して下さい。あとでまた聞きますから覚えておいてくださいね。:桜、猫、電車可能=○ 不可能=×(できなければ(4)認知機能は省略)
  3. 交通機関の利用(Lawton & Brody)外来:ここへはどうやって来ましたか?それ以外の場合:普段一駅離れた町へどうやって行きますか?自分でバス、電車、タクシ−、自家用車を使って旅行=○付添が必要=×
  4. 遅延再生(HDS-R)先程覚えていただいた言葉を言ってください。ヒントなしで全部可能=○ 左記以外=×
  5. 入浴(Barthel Index):お風呂は自分1人で入って、体を洗うのも手助けはいりませんか?自立=○ 部分介助または全部介助=×
  6. 排泄(Barthel Index):漏らすことはありませんか?トイレに行けないときは、尿瓶は自分で使えますか?失禁なし、集尿器自立=○ 左記以外=×
  7. 情緒・気分(GDS):自分が無力だと思いますか?いいえ=○ はい=×
*あくまでスクリ−ニングなので、異常(×)が検出された場合は、【標準的版】で評価することが必要
とのことだが、高齢者の自尊心を傷つけるHDS-Rが2項目も入っており、極めつけが質問7。個人的には使いたくない代物。むしろ藤沼 康樹先生が訳された「プライマリ・ケア老年医学」のDEATH SHAFTを高齢者本人の語りの中から埋めていくのが実用的である。
D-Dressing(着る)
E-Eating(食べる)
A-Ambulating(歩く)
T-Toileting(トイレ)
H-Hygiene(衛生(入浴))

S-Shopping(買い物)
H-Housekeeping(そうじ)
A-Accounting(お金の管理)
F-Food preparation(調理)
T-Transport (乗り物を使う)
資料
  • 井藤 英喜: “高齢者に対する総合機能評価の有用性と限界”. 日老医誌 (2006); Vol. 43: 690-692 .[PDF]
  • 東京大学医学部附属病院老年病科第3研究室講義資料「高齢者総合的機能評価