2010年9月29日水曜日

韓国の医療

年表形式での韓国医療事情の変遷
1962 住民登録法公布→住民登録番号導入
1980 家庭医療学会創設
1989 国民皆保健制度の実施
1997 KoreaMed開始→オープンアクセスの開始
1997 IMF危機→医療の合理化の加速
2000 医療保険の一本化、医薬分業
現在は、下記の変化が継続中
  • IT化:4レスホスピタル(ペーパーレス、フィルムレス、チャートレス、スリップレス)
  • 大規模化:ソウル峨山病院(2670床)、延世大学セブランス病院(2050床)、三星ソウル病院(1933床)、ソウル聖母病院(2050床)、ソウル大学病院(1600床)…いずれも1,000人を越える医師を擁する。
  • 国際化: JCI取得病院(仁荷大学病院、延世大学セブランス病院、ソウル聖母病院、高麗大学安岩病院)
  • 産業化: 済州ヘルスケアタウン(済州島西帰浦市に医療と健康の一大複合施設を建設。)
  • 戦略的医療ツーリズム市場への参入:トップを走るタイ、それを追う韓国(年間100万人→2020年200万人目標)
そして、2012年5月24〜27日 韓国 済州島にてWONCA開催予定
実際に韓国で病気になったときどうすればよいか?
  • ちょっと調子が悪い。→(薬)の看板を探し、薬を購入。
  • 医師の診察を受けたい。→ホテルのフロントに相談するか、2008年に始まった日本語による応急処置、疾病相談、病院案内の電話サービスを利用する。電話番号1339、年中無休で24時間対応している。
  • ブレインアタックやハートアタックの恐れがあり、死の恐怖を感じたとき→救急車の要請、電話番号119
  • 事前に、ツアーやクレジットカード付帯の保険内容を確認しておくことが大切。
  • 現地で健康トラブルに見舞われたときは、緊急性、重症度に応じて対応、緊急性があるのに、日本語対応や帰国に拘っていると、ゴールデンタイムを逸してしまう。
  • 診療の診断書、領収書をもらっておくことが重要。帰国後、診断書に翻訳を添えて国民健康保険で海外医療費払い戻し申請をするのに必要。
韓国情報収集のために
ハングル文字さえ克服すれば、韓国語は以下の理由で日本人にとって一番簡単な外国語とされる。
  • 語彙に漢語や外来語が多い。例)구급차(救急車)、앰뷸런스(ambulance)
  • 語順が日本語と同じ。例)이렇게(このように) 두통이(頭痛が) 심한(ひどい) 것은(ことは) 태어나고(生まれて) 처음으로다(初めてだ).
  • 文法が日本語に似ている。従って論文などを機械翻訳の精度が高い。例)韓国家庭医療学会誌に掲載された論文の要約をエキサイト翻訳で訳したもの。
Survey of Conceptions about Cold in a Local Area Workers' Periodic Health Examination
J Korean Acad Fam Med 2010 Jul; 31(07): 512~522


【英語からの翻訳】
バックグラウンド: 時代、セックス、教育状態、経済状態、この調査による寒さに関する概念について労働者の定期健康診断で行われた基礎データを集めるために。
方法: 1つの会社で働いている1,056人の労働者が、この6月1日から2006年7月7日までの調査のために含まれていました。 私たち
それらから自己によって報告されたアンケートを得ました。 アンケートの内容は、寒さの労働者の一般的特色と、原因と管理でした。 私たちは年令、性別、教育州、および経済状態のそばで寒さに関する概念の真の認識比を分析しました。
結果: セックスと経済状態によると、真の認識比は異なっていませんでした。 時代、'ウイルス'、'細菌'に従って
'寒い天気'は50年代の上で寒さの原因に関して最も低いです。 ‘自己制限疾患'、‘インフルエンザワクチン接種が寒さを予防する、'‘胸への衝撃は痰を取り除くために役立つ'、 ‘暖かい蒸気を吸入するのは減少鼻閉塞に役立つ'‘洗濯手は寒さを予防するために役立つ'、‘領域の多くの人々群衆が冷たさに影響されやすいこと'が50年代の上で寒さの管理に関して最も低いです。 教育状態によると、'ウイルス'、'食物'は50年代の上で最も高かったです。 ‘薬は速く回復する'‘注射療法は速く回復する'‘扁桃腺切除術は寒さを予防すること'を除いて、上の大学教育で他のものが最も高かったです。
教育に従って、年齢層、40年代と'ウイルス'における'ウイルス'だけ、食物で'上記では、50年代は最も高かったです'と述べてください。
上の大学教育で20年代で'インフルエンザワクチン接種は寒さを予防する'40年代、'薬は速く回復する''注射療法は速く回復するところ'で'注射療法は速く回復すること'が最も低かったです。
結論: 時代、教育レベルは寒さに関する概念の真の認識比にかなり関連しました。 したがって、私たちは教育しなければなりませんでした。概念の低認識比。
キーワード: 寒さ。 認識比。 年をとってください。 教育
【韓国語からの翻訳】
研究背景:人口学的特性にともなう風邪に対する理解(利害)程度を把握してみて比重を置かなければならない患者教育基礎資料を得ようと施行した。
方法:2006年6月1日から7月7日まで一介医療センターで検診を受ける1,178人を対象にした。 回収された質問用紙中分析が可能だった1,056部を分析した。 質問用紙は対象者らの一般的特性と風邪の原因、治療に関する内容であり性別、年齢、教育水準、経済水準にともなう風邪に対する理解(利害)程度を分析した。
結果:性別、所得水準にともなう風邪概念の正しい認識率の差はなかった。 年齢帯にともなう風邪の原因に対する質問らで‘ウイルス’、‘細菌’、‘寒い天気’全50代以上で正しい認識率は最も低かったし治療に対する質問らで‘自然に治ることができる疾患だ’、‘インフルエンザ予防接種は風邪を予防する’、‘片道節制酒殷鑑期を予防する’*、‘胸をたたいてくれるのは痰除去に役に立つ’、‘熱い蒸気を吸い込むのは鼻詰まり症状に役に立つ’、‘手洗われる風邪予防に役に立つ’、‘人が多いところは風邪が伝染しやすい'等では全50代以上で低かった。 教育水準にともなう分類では原因では‘はい’と答えた比率が差がなかった‘細菌’、‘寒い天気’、治療では‘インフルエンザ予防接種は風邪を予防する’、‘暖かい水の摂取は痰除去に役に立つ’、‘人が多いところは風邪が伝染しやすい’という質問らを除いた残り質問らで正しい認識率が大学校卒業以上で高かった。 年齢帯別に分けた後教育水準別に分析した時は原因では40代では‘ウイルス’だけ50代以上では‘ウイルス’、‘食べ物’で大学校卒業以上で高かったし20代では‘インフルエンザ予防接種は風邪を予防する’、40代では‘注射を合えば早く治る’だけが50代以上では‘薬を飲んでこそはやくより良い’、‘注射を打てば早く治る’らだけで大学校卒業以上で低かった。
結論:正しい認識率が差がある人口学的特性は年齢、教育水準であったし正しい認識率が低い概念らに対してより重点的に教育しなければならない。
中心単語:風邪;認識率;年齢;教育水準
*原文は、"편도절제술은 감기를 예방한다"で正確な翻訳は「扁桃摘出術は風邪を予防する」。

2010年9月15日水曜日

漢方とは?

今回は、薬剤師から漢方の概論についての講義でした。

漢方の原則
西洋医学のゴールが、母集団の共時的な平均(μ)で、一神教的であるのに対し、漢方でのゴールは、各患者の良好な健康状態、つまり経時的な平均で、多神教的である。テーラーメイド・メディシンと言われる所以である。
漢方の理論
患者の理想的な健康状態と現在の状態を結ぶベクトルが証であり、その証を言語化するための基準が八綱弁証(表・裏・寒・熱・虚・実・陰・陽)である。なかでも虚実の判断は、攻めの治療をするか守りの治療をするかの軸となるので重要。西洋医学でも、「活き」がいいから、手術、「活き」が悪いから保存的治療とか判断しますね。

漢方の診察
  1. 望診:視診のこと。西洋医学と異なるのは、舌の診察が重要視されること。
  2. 聞診:聴診のこと。当時は、聴診器がなかったので、声とか咳とかを聴きました。臭いも聞診に入ります。
  3. 問診:西洋医学と変わりません。現代ではシステミック・レビューや高齢者総合機能評価として体系化されていますが、病気の経過以外に、寒熱、汗、頭、耳、口、身体、飲食、排泄、四肢、婦人の月経妊娠を網羅することが大切です。
  4. 切診:現代の身体診察、検査に該当するものです。漢方で特徴的なのは、脈診や腹診がきめ細かいことです。
ナンバリングしたのは、この順番で優先順位があるからです。望診と切診が矛盾するときは、望診の判断を優先します。
漢方の副作用
もっとも頻度が高いのは、ツムラ128製剤のうち94製剤に含まれる甘草による偽アルドステロン症である。その他重篤な副作用に付いては、ツムラのHPに詳しい。
その他FAQや西洋薬との使い分けについて説明がありました。

2010年8月11日水曜日

オープンソースとオープンアクセス

 オープンソースの文献管理ソフトMendeleyとオープンアクセスの学術文献データベースCiNiiを利用すれば、上記のようなことが10分かそこらで出きるってことを長々と説明してしまいました。
 オープンソースソフトについては、YouTubeで"Revolution OS"というビデオを観て頂ければその経緯が分かるでしょう。
 オープンアクセスとは、ネット上で学術論文を誰でもアクセスできるようにするということです。各研究者が関連分野の雑誌を購読するコストが馬鹿にならないってことやアメリカなどでは税金からの補助を受けてなされた研究成果が納税者に公開されない矛盾から生じた運動。
 方法論には、2つある。「金の道」と呼ばれるオープンアクセスパブリッシングと「緑の道」と呼ばれるオープンアクセスセルフアーカイブという方法である。前者は、オンライン・ジャーナルの形態を残し、アクセスを自由化するという穏健な改革的方法。後者は、極論すれば、ジャーナルを廃し、各施設・各学会・、各人が発表物をネット上にアーカイブするという革命的方法。何故、金と緑の道なのかは、私も正確なところは知らないが、想像するに、ジャーナルという形態をとると、組織運営のため、資金を調達する必要が出てくる一方、セルフアーカイブであれば、各施設や個人が少額を負担するだけで済み、紙も必要がないから、地球環境にも優しいってことなんでしょうか。
 「金の道」の例としては、NEJMなど伝統的ジャーナルが一定期間をおいて論文を無料公開していることやBioMed Centralのような電子ジャーナルが最初から無料公開していることを挙げることができます。「緑の道」には、韓国の家庭医療学会雑誌の例があります。

2010年7月28日水曜日

医療紛争と謝罪


医療メディエーター協会北海道支部主催のメディエーターベーシックコースのファシリテーターを務められた先生から、雑誌「医療安全」の連載「医療紛争と謝罪“Sorry Works Movement”」をもとに、謝罪に関する基礎を講義頂いた。
謝罪とは何か?
  • プロセスとしての謝罪=謝罪行為+謝罪受容
  • 謝罪行為には、責任承認、共感表明の2種類がある。
  • 謝罪行為には、「受容せよ」という要求のニュアンスが含まれてしまう。
  • 謝罪受容には、心理的安定、謝罪行為と向き合う構えが必要なので、時間を要する。
  • 共感表明の謝罪が、責任承認として誤解されることがある。
アメリカにおける情報開示と謝罪促進の動向
謝罪が訴訟に及ぼす影響
  • 訴訟において謝罪が取り上げられることは少ない。
  • 慰謝料が減額されることがある。
  • 責任承認にあたる謝罪では、過失を証明する証拠とされることがある。

2010年7月14日水曜日

クスリのリスクを知る3(つ)の法則

抗MRSA薬ザイボックスTMのインタビューフォーム1によると、国内のデータでは、(1)血小板減少の副作用は、100例中19例、(2)味覚倒錯の副作用は0例であった。それぞれの副作用発生率の95%信頼区間はどのくらいだろうか?後者のように分子がゼロのリスクの95%信頼区間を3秒以内に答えることができるようになるのが今日のSBOで、右掲書に紹介されている「3の法則」。

それだけでは、間が持たないので、比率の95%信頼区間について3つの法則(公式)を並べてみた。

番目の法則:正規近似による母比率の信頼区間。(Wald法)

はじめに
本来なら、副作用の有無のようなカテゴリ変数の確率は二項分布に従うので、ClopperとPearsonの方法2のアルゴリズムを利用するのが、原理的には正確である。統計ソフトRの関数binom.testでは、その方法が採用されている。しかし、統計ソフトを使わないと計算が煩雑で、実用的とは言い難い。そこで実際には、nが充分大きいとき、二項分布B(n,p)が正規分布N(np,np(1-p))で近似されることを利用した下記の式が通常の統計学の教科書には紹介されている。
公式
p=s/nのとき、前提条件として、np > 10 かつ n(1 – p) > 10 であることが必要。
95%信頼区間=p±1.96×√(p(1-p)/n)
例題
(1) 0.19±1.96*sqrt(0.19*0.81/100)= 0.190±0.077 ∴ 11.3~26.7%
(2) np=0になるため計算不能
の法則:Agrestiと Coullの方法

はじめに
Agresti とCoull はWald の方法を修正したものを提案した3。「2の法則」というのは、副作用あり・なしのそれぞれに2例ずつ加える計算方法から名づけてみたもので、一般的な呼称ではありません。この方法では、s=0 の場合やs=nであっても信頼区間が計算でき、さらに、原理的には正確なはずのClopperとPearsonの方法よりも精度が高いと報告されています。
公式
p=(s+2)/(n+4)
95%信頼区間=p±1.96×√(p(1-p)/(n+4))
例題
(1) 21/104±1.96*sqrt((21/104)*(83/104)/104)=0.202±0.077 ∴ 12.5~27.9%
(2) 2/104±1.96*sqrt((2/104)*(102/104)/104) =0.019±0.026 ∴ 0~4.5%
3の法則:ゼロ分子のリスクの推定法

はじめに
「2の法則」で計算可能だが、なにせ面倒と思うのは私だけではないらしい。英語圏では、簡単な方法が医学雑誌の記事4、統計学の教科書5、Wikipedia6など広く紹介されている。原理は、(1-p)n=0.05の両辺対数を取って、n×ln(1-p)=ln(0.05)。テーラー展開の第二項以降をネグると、ln(1-p)≈-pなので、np= –ln(0.05) = ln(20) = 2.9957 ≈ 3
公式
上側95%信頼区間=3/n
例題
(1) 分子≠0なので計算不能。
(2) 3/100=0.03 ∴ 0~3.0%
 ちなみに、例題の副作用は、同じインタビューフォームによると、海外データでは2,367例中血小板減少が9例(0.38%)、味覚倒錯が24例(1.01%)だったそうです。薬剤師さんがメーカーに国内データと海外データの違いについて問い合わせて頂いたところ、理由は明らかではないが、下記の3点が考えられるとのことでした。
  1. 国内試験のほうが、高齢者・重症者が多かった。
  2. 国内外で有害事象の報告義務の程度が異なる。
  3. 海外治験が先行していたため、国内試験では骨髄抑制に注目が集まった。
文献
  1. ザイボックスのインタビューフォー厶http://www.info.pmda.go.jp/go/interview/3/400079_6249002F1024_3_1F
  2. Clopper, C.; Pearson, E. S. (1934). "The use of confidence or fiducial limits illustrated in the case of the binomial". Biometrika 26: 404–413.
  3. Alan Agresti, Brent A. Coull Approximate Is Better than "Exact" for Interval Estimation of Binomial Proportions The American Statistician, Vol. 52, No. 2. (1998), pp. 119-126.
  4. Hanley JA, Lippman-Hand A. If nothing goes wrong, is everything all right? Interpreting zero numerators. JAMA. 1983 Apr 1;249(13):1743-5. http://www.medicine.mcgill.ca/epidemiology/hanley/Reprints/If_Nothing_Goes_1983.pdf
  5. Gerald van Belle "Statistical Rules of Thumb" http://www.vanbelle.org/chapters/webchapter2.pdf
  6. Wikipedia英語版 http://en.wikipedia.org/wiki/Rule_of_three_(medicine)