2010年4月14日水曜日

高齢者総合機能評価

下記資料をもとに高齢者の総合的機能評価の講義であった。ガイドラインに挙げられているCGA7を引用すると、
高齢者総合的機能評価簡易版(CGA7)
  1. 意欲(Vitality Index):外来または診察時や訪問時に、被検者の挨拶を待つ自分から進んで挨拶をする=○返事はするまたは反応なし=×
  2. 復唱(HDS-R):これから言う言葉を繰り返して下さい。あとでまた聞きますから覚えておいてくださいね。:桜、猫、電車可能=○ 不可能=×(できなければ(4)認知機能は省略)
  3. 交通機関の利用(Lawton & Brody)外来:ここへはどうやって来ましたか?それ以外の場合:普段一駅離れた町へどうやって行きますか?自分でバス、電車、タクシ−、自家用車を使って旅行=○付添が必要=×
  4. 遅延再生(HDS-R)先程覚えていただいた言葉を言ってください。ヒントなしで全部可能=○ 左記以外=×
  5. 入浴(Barthel Index):お風呂は自分1人で入って、体を洗うのも手助けはいりませんか?自立=○ 部分介助または全部介助=×
  6. 排泄(Barthel Index):漏らすことはありませんか?トイレに行けないときは、尿瓶は自分で使えますか?失禁なし、集尿器自立=○ 左記以外=×
  7. 情緒・気分(GDS):自分が無力だと思いますか?いいえ=○ はい=×
*あくまでスクリ−ニングなので、異常(×)が検出された場合は、【標準的版】で評価することが必要
とのことだが、高齢者の自尊心を傷つけるHDS-Rが2項目も入っており、極めつけが質問7。個人的には使いたくない代物。むしろ藤沼 康樹先生が訳された「プライマリ・ケア老年医学」のDEATH SHAFTを高齢者本人の語りの中から埋めていくのが実用的である。
D-Dressing(着る)
E-Eating(食べる)
A-Ambulating(歩く)
T-Toileting(トイレ)
H-Hygiene(衛生(入浴))

S-Shopping(買い物)
H-Housekeeping(そうじ)
A-Accounting(お金の管理)
F-Food preparation(調理)
T-Transport (乗り物を使う)
資料
  • 井藤 英喜: “高齢者に対する総合機能評価の有用性と限界”. 日老医誌 (2006); Vol. 43: 690-692 .[PDF]
  • 東京大学医学部附属病院老年病科第3研究室講義資料「高齢者総合的機能評価

2010年3月10日水曜日

血液ガス分析のトリビア3題

1. Astrupの装置
 古い先生は、血液ガス分析のことを「アストラップ」と呼ぶことがある。その由来は、デンマークの医師Poul Bjørndahl Astrup (1915年8月4日 - 2000年11月30日)の名前にある。1950年代初頭、デンマークで猛威をふるったポリオに罹患した鉄の肺を装着する子供たちを多く診るなか、その動脈血がアシドーシスになるのに気づき[1]、臨床化学の領域に入る。PaCO2測定電極を開発し、1956年のRadiometer社の血液ガス分析装置の開発に貢献、その後、デンマーク最初の臨床生化学教授として、酸塩基平衡のノモグラムで有名な、Ole Siggaard-Andersenをはじめ優秀な研究者を育てた。晩年の1990年代初頭に一度来日している。

2. Mellemgaardの式
 1966年発表にMellemgaardらにより発表された[2]正常人におけるAaDO2の回帰式、AaDO2=AGE×0.21+2.5 SD=7.1のことをいいます。じん肺ハンドブックでは、+3SDをF++の基準としました。つまり、F++の基準値=AGE×0.21+23.8、65歳で37.45で、一歳増えるごとに、0.21ずつ増加するというわけです。この式を知っておけば、100歳の患者さんの基準値も計算できます。

3. 静脈血ガス分析からPaCO2を推定する。
 酸素飽和度が簡便に分かるようになって、血液ガス分析がどうしても必要という場面も減りつつありますが、PaCO2が知りたいが、すぐに動脈血を採取できないとき、動脈血を採取するつもりで静脈血採取になってしまったとき、どうすればいいでしょう?そんなとき、「ERの裏技 極上救急のレシピ集」で紹介されている下記の公式が役に立ちます。
PaCO2= PvCO2-6 [3]
参考文献
[1] P. Astrup, H. Gotzche, F. Neukirch Laboratory investigations during treatment of patients with poliomyelitis and respiratory paralysis. The British Medical Journal, April3, 1954, 1: 780-786.
[2] Mellemgaard K. The alveolar-arterial oxygen difference: its size and components in normal man. Acta Physiol Scand. 1966 May;67(1):10-20.
[3] Can peripheral venous blood gases replace arterial blood gases in emergency department patients? CJEM. 2002 Jan;4(1):7-15.

2010年2月25日木曜日

禁煙外来

施設基準などは、「ニコチン依存症管理料情報」を参照。

禁煙外来の流れ
  1. 禁煙の動機の語りを傾聴し、保険適応基準を確認。
  2. 持病、特に慢性気管支炎、精神科疾患、腎疾患の有無の確認。
  3. ニコチン受容体とドパミンの関係を説明。
  4. チャンピックスの2つの薬理作用と副作用を説明。
  5. 処方のステップアップを説明。
  6. 手帳記載を指導。
  7. 初回を握手で締めくくる。
  8. 十日目にナースから電話。
  9. 第二、四、八、十二週でフォロー。
  10. 最終日、体重が増えてしまった方には禁煙出来たのだから、減量も可能であること、万が一、また喫煙してしまっても再挑戦の機会があることを説明して、卒煙証書を渡し、握手する。
キーワードは、握手です。

2010年1月27日水曜日

新しい嚥下の解釈-プロセス・モデルについて

今日の学習会は、リハビリ科のドクターからJeffrey B. Palmerが提唱した嚥下のプロセスモデルについて、爬虫類、四足歩行哺乳類、人間と比較した咽頭の解剖や咽頭の進化の過程で言語の発声が可能になったことなど興味深い話を織り交ぜ、説明して頂いた。内容は、門外漢の私が下手に要約するよりも、下記のe-learningのスライドを見ていただきたい。
演者の先生が強調されていたのは、有名な5期モデルを含め複数のモデルが存在すること、現実の正常の嚥下は幅広く5期モデルでは説明しきれないことであった。

個人的な感想として、理論から演繹したモデルと現実から帰納したモデルには、乖離があることはよくあることで、投資の世界では、ファンダメンタルを重視するか、チャートを重視するか、統計の世界でも、理論的な確率を基礎とするか、主観的な確率を導入するかで、それぞれの派閥がある。モデルのユーザとしては、TPOに応じ、役立つモデルを当てはめれば、いいと思ったのでした。

2010年1月11日月曜日

無料統計ソフト「R言語」


【簡単な紹介】
R言語とは、1984年、AT&Tベル研究所で開発された統計処理言語であるS言語を参考に、ニュージーランドのAuckland大学のRoss IhakaとRobert Gentlemanにより学生の教育を目的に開発された。オープンソースとして開発が継続されているため、世界中の専門家が磨きをかけ、パッケージを追加し、現在では、FDA内部やGoogleでも使用されるに至っています。 Sの先を行くという願いを込めてRと名付けられたそうです。しかし、その短い名称が徒になり、ネットでの関連情報の検索は困難でした。そんな状況を打開するため、Rjpwiki(後述)のような関連情報の集積場所が出来ることとなりました。

【R本体のインストール】
  1. The Comprehensive R Archive Network のサイトへ行く。
  2. "Download and Install R"の"Windows"をクリック。
  3. "base"をクリック。
  4. "Download R 2.10.1 for Windows"をクリックすると、ダウンロードが開始。
  5. ダウンロードが終了したら、そのファイルをダブルクリックして指示にしたがってインストール。
【デモ:起動、t検定、ヘルプ、終了】
  • デスクトップにできたショートカットをダブルクリックして起動。
  • 次のスクリプトを実行
nations<-read.csv("C:/Documents and Settings/foo/デスクトップ/sample.csv")
asia<-subset(nations, region=="Asia")
europe<-subset(nations, region=="Europe")
t.test(asia$area, europe$area)
  • ヘルプ ?foo、help.search("foo")
  • 終了 q()
【Rcmdrのインストールと実行】
  • R上で、install.packages("Rcmdr") と入力。
  • ダウンロード元を選択して、しばし待つ。
  • R上で、library(Rcmdr) と入力すると、Rcmdrが起動。
【間奏曲~Rの利点と欠点】

利点!
  • 無料。ちなみに、JMP 8.0.1 は、176,400円、Dr.SPSS2は102,900円、エクセル統計2008は、41,580円
  • OSを選ばない。Windows、MacOS X、Linuxなど主要なOS版がある。
  • オープンソースなので、バグの修正や統計学の新しい理論の適用が早い。
欠点? 見方を変えれば利点。解決策も用意されている。
  • リソースが圧倒的に英語→英語の勉強になる。解決策:Rjpwikiの利用、日本語R関連図書
  • コマンドで操作→慣れると、かえって便利。解決策:Rcmdrパッケージ
【Rcmdrのデモ】
  • データ→データのインポート→テキストファイルまたはクリップボード、URLから…
  • 統計量→平均→独立サンプルt検定…
【参考図書】
【参考サイト】