2011年6月14日火曜日

脱水症の診断と治療

【病因学】
  • 水不足、飲水行動が取れない、口渇がない
  • 環境(高温環境、航空機内*などの乾燥環境)
  • 疾患による発熱、嘔吐・下痢
*航空機内は、湿度が10%程度で、1時間あたりの不感蒸散80mlにもなる。

【診断】
小児の場合:
  • capillary refill test:LR+ 4.1、LR- 0.57
  • 涙液:LR+ 2.3、LR- 0.54
  • 全体の外観:LR+ 1.9、LR- 0.46
  • 眼球陥凹:LR+ 1.7、LR- 0.49
  • 粘膜・皮膚の湿潤性:LR+ 1.7、LR- 0.41
成人の場合:
  • 尿比重(USG)>1.020 :LR+ 11、LR- 0.09
  • capillary refill test:LR+ 6.9、LR- 0.7
  • 眼球陥凹:LR+ 3.4、LR- 0.5
  • 腋窩の乾燥:LR+ 2.8、LR- 0.6
  • 舌の乾燥*:LR+ 2.1、LR- 0.6
  • 口腔の乾燥:LR+ 2.0、LR- 0.3
  • 舌の縦皺:LR+ 2.0、LR- 0.3
  • tilt test(起立で脈拍が30回以上増加、但し臥位で2分間、立位で1分間以上経過して測定すること):LR+ 1.7、LR- 0.8
*漢方で五苓散をはじめとする水利薬の適応となる所見、舌の歯圧痕は軽い脱水の所見なのかもしれない。

【治療】
経口補水液(ORS)


既製品を利用

Na
ブドウ糖浸透圧
OS-1 50mEq/L
20mEq/L
2.5g/dl
270mOsm/L
アクアライトORS
35mEq/L
4.0g/dl
200mOsm/L
ソリタ-T顆粒3号
35mEq/L
3.42g/dl 
199mOsm/L
ソリタ-T顆粒2号
60mEq/L
1.6g/dl

スポーツドリンク500mlを半分に薄めたものに1gの塩を加える(塩1g=17mEq/L)

Naブドウ糖
アクエリアス
14.8mEq/L
4.7g/dl
307mOsm/L
ポカリスエット 
21mEq/L
6.7g/dl
323mOsm/L

完全自炊

Naブドウ糖浸透圧
WHO-ORS(1975年)*
90mEq/L
2.0g/dl 
311mOsm/L
WHO-ORS(2002年)**
75mEq/L
1.35g/dl
245mOsm/L
American Academy of Pediatrics
40~60
2.0~2.5
ESPGHAN***
60
1.6
240mOsm/kg
*コレラ(便中Na120mEq/L)を想定
**通常の胃腸炎(便中Na50mEq/L)を想定
***European society of Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition
具体的なレシピを下記に記す。

清潔な水1Lを確保する
  • 煮沸(熱いままPETボトルに入れないように注意)
  • 水を浄化する安くてよい方法は、清潔な透明の容器に水を入れて、直射日光に最低 6時間晒す。もしも曇り場合は、2日間晒す。
  • 緊急避難的に化学的な消毒の方法があり、手法としては、水1リットルに塩素剤(次亜塩素酸ナトリウム6%の製品。「ピューラックス」)を3滴入れ、よくかきまぜる。30分ほど放置してから使う。
上記に調味料のサ・シ・スを加味。
  • 砂糖(ショ糖) 40g大さじ4杯+小さじ1杯
  • 塩 3g小さじ3分の1
  • 酢として、100%グレープフルーツジュース、あるいはレモンジュースを好みに応じて30~100ml追加。(なけらばなくて構わないが、味の調節、クエン酸、カリウムの補充のために。)
参考
  • 小さじ=5cc、塩なら5g、砂糖なら3g相当(ペットボトルのキャップで代用可能)
  • 大さじ=15cc、塩なら15g、砂糖なら10g相当
  • 塩少々=親指と人差し指でつまんだ程度、小さじ1/8相当
  • ひとつまみ=親指と人差し指、中指でつまんだ程度、小さじ1/4相当
持続皮下注射
  • 腹壁や肋間の皮下に刺したプラスチック留置針から5~24時間で500-1000ml程度の補液をします。
  • 注射液のため少しむくみますが,時間をかければ吸収されます。
  • 等張液(血液と同じ濃さの注射液)であれば痛みは少なく副作用も最小限です。
点滴

Naブドウ糖浸透圧
生食
154mEq/L
0g/L
308mOsm/L
ソリタ1号液
90mEq/L
26g/L
324mOsm/L
ソリタ2号液
84mEq/L
32g/L
346mOsm/L
ソリタ3号液
35mEq/L
43g/L
309mOsm/L
ソリタ4号液
30mEq/L
43g/L
299mOsm/L
5%グル
0mEq/L
50g/L
278mOsm/L
生食は、点滴後、細胞内:細胞外組織:血管内=0:3:1で分布する。
5%グルは、点滴後、細胞内:細胞外組織:血管内=8:3:1で分布する。

【Take-home messages】
  1. ウイルス性胃腸炎に対する五苓散(NO17)の有用性
  2. NaCl 1g = 17mEq・・・塩沢ときの第一法則
  3. ブドウ糖とNaClのモル比が1になるための砂糖と塩のg比は11.7である。・・・塩沢ときの第二法則
【参考文献】

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