2013年6月26日水曜日

片頭痛診断メモ

有病率の高い病気なのだが、みなさん、脳外科などへまず行かれるのか、一般医のところで診る機会は意外に少ない。ゴッホの「星月夜」とか、芥川龍之介の「歯車」とかで前兆の閃輝暗点(Scintillating Scotoma)が描かれている。(下の動画も参照してください。)


このように特徴的な症状があれば診断は困難ではないのですが、前兆のない片頭痛は以下の「5, 4, 3, 2, 1基準」で診断される。

  • 5回以上の発作 
  • 4時間から3日に渡る発症持続 
  • 拍動性(Pulsating)、片側だけの発症(Unilateral)、中程度から激しい(Moderate or severe)程度の痛み、日常的な身体動作の回避やそれによる症状悪化(Aggravation by or causing Avoidance of routine physical Activity)のPUMAの4項目うち2つ以上当てはまる 。
  • 吐き気(Nausea)や嘔吐(Vomiting)、羞明(Photophobia)、音声恐怖(Phonophobia)のうち1つ以上当てはまる 。

"Pulsating, duration of 4–72 hOurs, Unilateral, Nausea, Disabling"の略であるPOUNDingという簡略した記憶法もある。上の5つの基準のうち4つが合致した場合、その片頭痛の診断における陽性尤度比は24となる。頭痛の経過を判定するには、頭痛ノートが有用だが、スマホが普及した現在、例えば、株式会社プラスアールで開発したアプリなども便利である。

参照

2013年6月25日火曜日

ワクチンについて

右掲本では、予防接種に関し、丸々一章を割いて詳しく説明している。恥ずかしながら、莢膜多糖体の免疫原性は2歳未満で弱いことなど、はじめて知った。発達免疫学について教科書を読み直さなければ…他にも、効果や副反応にはじまり、スケジュールがずれたときの対応、保存方法など痒いところに手が届いた記述があるので参照して欲しい。

ここでは、本当に基本的なところを確認しておく。まず、スケジュールに関しては、下記のリンクが有用。


さらに、何が生ワクチンということも大切。次のワクチンまで空けなければならない期間や接種回数が異なってくるからだ。空ける期間に関しては、不活化ワクチンの場合1週間なのに対し、生ワクチンの場合4週間となる。生ワクチンの語呂合わせ例を示す。
憖っか(なまじっか)な風水マシン欠格ポリを追う。
生・耳下・風・水・麻疹・結核・ポリオ・黄
参照:2012年改訂版保育所における感染症対策ガイドライン

2013年6月24日月曜日

主治医意見書

特定疾患一覧
  1. がん末期
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病)
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準
ランク J:何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
1.交通機関等を利用して外出する
2.隣近所へなら外出する
ランク A:屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない
1.介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2.外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
ランク B:屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
1.車いす(wheelchair)に移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
2.介助により車いすに移乗する
ランク C:1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
1.自力で寝返り(roll-over)をうつ
2.自力では寝返りもうたない

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準
ランク Ⅰ :何らかの認知症 を有するが、日常 生活は家庭内及 び社会的にほぼ 自立している。 在宅生活が基本であり、一人暮らしも可能である。相談、指導等を 実施することにより、症状の改善や進行の阻止を図る。 具体的なサービスの例としては、家族等への指導を含む訪問指導や 健康相談がある。また、本人の友人づくり、生きがいづくり等心身の 活動の機会づくりにも留意する。
ランク Ⅱ :日常生活に支 障を来たすよう な症状・行動や 意思疎通の困難 さが多少見られ ても、誰かが注意 していれば自立 できる。
Ⅱa 家庭外で上記 Ⅱの状態がみら れる。 たびたび道に迷うとか、買 物や事務、金銭管理等それま でできたことにミスが目立つ 等
Ⅱb 家庭内でも上 記Ⅱの状態がみ られる。 服薬管理ができない、電話 の応対や訪問者との対応等一 人で留守番ができない等 在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難な場合もあるので、訪 問指導を実施したり、日中の在宅サービスを利用することにより、在 宅生活の支援と症状の改善及び進行の阻止を図る。 具体的なサービスの例としては、訪問指導による療養方法等の指導、 訪問リハビリテーション、デイケア等を利用したリハビリテーション、 毎日通所型をはじめとしたデイサービスや日常生活支援のためのホー ムヘルプサービス等がある。
ランク Ⅲ :日常生活に支 障を来たすよう な症状・行動や 意思疎通の困難 さが見られ、介護 を必要とする。
Ⅲa 日中を中心と して上記Ⅲの状 態が見られる。 着替え、食事、排便、排尿 が上手にできない、時間がか かる。 やたらに物を口に入れる、 物を拾い集める、徘徊、失禁、 大声、奇声をあげる、火の不 始末、不潔行為、性的異常行 為等 日常生活に支障を来たすような行動や意思疎通の困難さがランクⅡ より重度となり、介護が必要となる状態である。「ときどき」とはどの くらいの頻度を指すかについては、症状・行動の種類等により異なる ので一概には決められないが、一時も目を離せない状態ではない。 在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難であるので、訪問指導 や、夜間の利用も含めた在宅サービスを利用しこれらのサービスを組 み合わせることによる在宅での対応を図る。 具体的なサービスの例としては、訪問指導、訪問看護、訪問リハビ リテーション、ホームヘルプサービス、デイケア・デイサービス、症 状・行動が出現する時間帯を考慮したナイトケア等を含むショートス テイ等の在宅サービスがあり、これらを組み合わせて利用する。
Ⅲb 夜間を中心と して上記Ⅲの状 態が見られる。 ランクⅢa に同じ
ランク Ⅳ :日常生活に支 障を来たすよう な症状・行動や 意思疎通の困難 さが頻繁に見ら れ、常に介護を必 要とする。 ランクⅢに同じ 常に目を離すことができない状態である。症状・行動はランクⅢと 同じであるが、頻度の違いにより区分される。 家族の介護力等の在宅基盤の強弱により在宅サービスを利用しなが ら在宅生活を続けるか、または特別養護老人ホーム・老人保健施設等 の施設サービスを利用するかを選択する。施設サービスを選択する場 合には、施設の特徴を踏まえた選択を行う。
ランク M 著しい精神症 状や周辺症状あ るいは重篤な身 体疾患が見られ、 専門医療を必要 とする。 せん妄、妄想、興奮、自傷・ 他害等の精神症状や精神症状 に起因する周辺症状が継続す る状態等 ランクⅠ~Ⅳと判定されていた高齢者が、精神病院や認知症専門棟 を有する老人保健施設等での治療が必要となったり、重篤な身体疾患 が見られ老人病院等での治療が必要となった状態である。専門医療機 関を受診するよう勧める必要がある。

参考:主治医意見書記入の手引き

2013年6月7日金曜日

【本】東大がつくった高齢社会の教科書

タイトルに敢えて「東大が作った」という言葉を入れることで、それに誘われる読者層の獲得しようとしたことが想像される。しかし、その内容はいたって硬派。幅広い人に真剣に高齢社会を考えて欲しいという執筆者の危機感が感じられる。この本を教科書とした第一回高齢社会検定試験の開催も、そのような危機感からくるものでしょうか。

具体的な本の紹介については、車輪の再発明は避けて、目次は新元社のサイトを、書評については、ニッセイ基礎研究所の発行の解説をご覧ください。

蛇足ながら、個人的な感想を付け加えると、各医療機関が患者としての高齢者のみならず、地域社会にアプローチする部門及びそのための資源(人材、予算)の投入が早急に必要であろうということ。

2012年6月13日水曜日

医学における社会ネットワーク分析

WONCA APRカンファレンスでのポスターの披露をさせて頂いた。その前振りとして、簡単に社会ネットワーク分析について説明。ここでは、Nicholas A. Christakis教授のTEDの講演を貼っておきます。



論文の紹介:肥満や喫煙が感染するということで、教授の著書の日本語訳「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 」が話題になりました。同書でも引用されておりますが、NEJMで発表されたものを挙げておきます。
アプリケーションの紹介
参考図書の紹介:日本の研究者が一般向けに書いた易しい入門書も出ています。
実際に、ネットワークデータを使って遊んでみたい向きには、Facebook上のアプリ、netvizzやNameGenDevを使って、データをダウンロードし、上記で紹介したアプリケーションに取り込んで、自分の友人のネットワークを視覚化してみるとインパクトがあります。
Gephiを使った漢方薬製剤のネットワークの視覚化
本題は、WONCA APRカンファレンスでの発表だが、上に紹介したGephiを使って、ツムラの漢方薬128製剤のネットワークグラフを作成しました。エッジは共通する生薬です。modularityでグループ分けし、ローカルクラスタリング係数でノードを並べ替えて、レイアウトしました。みっともない英語を晒すのも気が引けるので、結論のグラフだけ下記に示します。

地下鉄の路線図のようなグラフですが、大雑把に同じような作用の薬剤が同じ路線に配置され、その群で特徴のある薬剤がターミナルに位置するように配置されています。主催国が韓国だったので、四象医学に敬意を表してちょっと無理して4群にまとめたこと、共通生薬の個数だけを取り上げて量や種を無視していることなどから実際の漢方理論との齟齬は生じているが、ビジュアルに薬の傾向を把握できるので、ある程度の漢方理論を学んだあとのリファレンスとしては有用である。さらに、レイアウトを変えたグラフもこちらに用意した。