2011年3月11日金曜日

SEA「 Miss Basedowのときめき」

今回は、研修医の先生のSignificant Event Analysisの発表でした。

What happened?
60歳女性が咳を主訴に来院。特異的な徴候もなく、家族が風邪を引いているということから上気道炎と診断し処方。5ヶ月後、Basedow病であることが判明。カルテを見直すと脈拍125bpmの記載があった。

Why did it happen?(Five Whys)
  1. 洞性頻脈を軽視した。
  2. 診断の早期閉鎖をしてしまった。
  3. 甲状腺疾患の有病率を低く見積もっていた。
  4. 甲状腺の診察をしなかった。
  5. 甲状腺の診察を主観的なものと認識していた。
What have you learned?

洞性頻脈について
定義 >100bpm = 平均+2SD
鑑別診断
  • 循環血液量の不足、tilt test陽性:
  • 頻脈以外の随伴症状を伴う疾患:低酸素、発熱、心不全など
  • 内分泌系疾患:甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫など
  • その他:恐怖、怒り、不安、薬物など
甲状腺疾患の有病率(医事新報3740:22,1995)
  • Basedow病:男性 0.18%、女性 0.32%
  • 橋本病:男性 2.7%、女性 11.8%
甲状腺機能亢進症の症状
  • 頻脈(>90bpm):感度 80%、特異度 82%、陰性尤度比 0.2
  • 甲状腺腫:感度 93%、特異度 59%、陰性尤度比 0.1
  • 眼瞼後退(Dalrymple徴候):感度 34%、特異度 99%、陽性尤度比 31.5
  • 眼瞼遅延(von Graefe徴候):感度 19%、特異度 99%、陽性尤度比 17.6
甲状腺の診察法
  • 視診:首を進展して、横から見る。
  • 触診:"rule of thumb"、嚥下運動をさせる。
  • 甲状腺の有無のCohenのκ係数は、0.77でLandisとKochの基準ではかなりの一致を示す。
What have you changed?
  • 安静時の頻脈をみたとき重症度によって分類する。
  • 重症でない場合、事前確率の高さから、甲状腺疾患は必ず念頭に置く。
  • 甲状腺は必ず診察。機能亢進疑い、甲状腺腫がなければ可能性は下がる。
  • TSHをスクリーニングするかどうかは諸説あるが、年齢によっては検討。
Clinical Pearl:
手首と首の触診を見縊るな。

References

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