2011年11月23日水曜日

実地疫学の味方 - EZR on R Commander

NEJMの2011年11月10日号に「2011年の欧州における腸管出血性大腸菌感染事件」におけるドイツの実地疫学の報告が掲載された。(Robert Koch Institutの最終報告はこちら)その中で原因食材の同定のためマッチドケースコントロール研究が行われ、解析には条件付きロジスティック回帰分析が用いられている。補遺によると、解析にはRが使われたようだ。そこで解析を検証してみようと考えたが、生データが入手出来ない。

そこで、代わりに1996年のデンマーク・フュン県でのネズミチフス菌による食中毒のアウトブレイク1のデータがEpi packageにあるので、それを読み込んで、この解析法を追体験してみることにした。

しかし、あまり多用しない統計解析方法で、リファレンスを参照しつつ、コンソールにコマンドを打ち込むのは、手間隙がかかる。そんなとき役に立つのが、R Commanderをベースに自治医科大学さいたま医療センター血液科が開発した"EZR on R Commander"である。今回はこれを用いることとする。以下に、EZR on R Commanderがインストールしてあることを前提に解析の手順を図示する。

1.準備として、コンソールでEpiパッケージをインストール、ロードして、Rコマンダーを起動する。そして、パッケージに含まれるデータを読み込む。

2.パッケージ名"Epi"とデータセット名"S.typh"を選択

3.統計解析からマッチドペア解析⇒条件付ロジスティック解析を選択

3.目的変数"case"、説明変数"beef, egg, ..."、マッチドペア"set"の選択

4.plant7(7番プラント製造の肉を2週間以内に食べた場合)のオッズ比が有意に高いことが判明する。

蛇足だが、現在公開中の映画「コンテイジョン」では、リアリティを追求し、CDCなどを取材し、実地疫学者の仕事を描いたり、SEIRモデルやBasic reproduction numberの話が出てきたりするらしい。ぜひ、見ておきたい作品。



1) Molbak K and Hald T: Salmonella Typhimurium outbreak in late summer 1996. A Case-control study. (In Danish: Salmonella typhimurium udbrud paa Fyn sensommeren 1996. En case-kontrol undersogelse.) Ugeskrift for Laeger., 159(36):5372-7, 1997.

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