某病院医師夫妻のオウム病の症例報告があった。
発熱、全身検体、頭痛、下痢があり、時節は新型インフルエンザがマスコミを賑わせ、北海道には上陸していなかった頃。北海道第一号の汚名を着たくない患者の一心で、飼っていたインコに思い当たり、「オウム病」の名前が患者の口に上る。確かに、抗体価検査をすると、有意上昇。血清検査では、ご夫婦ともに肝機能障害を認め、肺CT上はair bronchogramを伴う硬化像を呈していた。MINO+CTRXで治療開始、奥様の方は一時血小板低下もありステロイドを併用し、順調に治癒。
感染症法における四類感染症で、保健所に届けたところ、当該保健所には初めての報告とのこと。インコの便をPCR検査したところChlamydophila psittaciを検出したが、殺処分(獣医学では淘汰)は免れ、Standard Precautionを指導されたとのこと。
シックコンタクト、ペット、旅行に関し、問診することの重要性を再認識させてくれる症例報告でした。特に高齢者という潜在的易感染者が旅行し、ペットを飼う時代になってくると、その重要性は強調され過ぎることはないでしょう。そして、事物のネットワークが密になってきた現代においては、いっそう医者の「博覧強記」が要求されるようになってきている。同時に、患者の語りの重要性が示唆される症例でもあった。
2009年7月29日水曜日
2009年7月28日火曜日
後腸骨稜からの骨髄穿刺
日本血液学会から6月4日付けで「成人に対する骨髄穿刺の穿刺部位に関する注意(pdf)」なる文書が出ておりました。骨髄穿刺は、基本的に、後腸骨稜から行うようにとの勧告です。個人的には、胸骨と前腸骨稜からの経験しかないので手技に関してYouTube動画を捜してみました。
2009年7月14日火曜日
高エネルギー外傷の飛び込みに気をつける。
【キーワード】 高エネルギー外傷、PTD、ロード&ゴー、TAF3XMAPD、PATBED2X
【高エネルギー外傷のMechanism】
交通事故では、同乗者の死亡、車から放り出された、搭乗空間が高度に変形、救出に20分以上要した、車の横転、5m(7歩分)以上跳ね飛ばされた、バイクとライダーが離れているなど。その他では、機械器具に体幹部が挟まれた、6m以上からの墜落、頚部から鼠径部までの鋭的損傷など
【はじめに】年間約4万人が外傷で亡くなっている。その中には、上手くすれば、死ななかった人がおり、これを「防ぎ得た外傷死(PTD)」と呼ぶ。2002年の調査では、38.9%が防ぎ得た外傷死の可能性があるとされた。翻って、米国ではどうなのだろうか?
【外傷死の実際】
ロード&ゴー「現場で生命予後に関係のない観察・処置は省略し、5分以内に現場を出発、受傷から1時間以内に適切な医療機関へ搬送すること」
Primary Survey(生理学的評価)TAF3XMAPDを除外することで安定化させる。
Secondary survey(解剖学的評価)PATBED2Xを除外
【終わりに】
自殺未遂、スポーツ(競技、クラブ活動)、犯罪(暴行、虐待)、労働災害などで受傷し、歩いてくる高エネルギー外傷患者に注意。
参考図書
【高エネルギー外傷のMechanism】
交通事故では、同乗者の死亡、車から放り出された、搭乗空間が高度に変形、救出に20分以上要した、車の横転、5m(7歩分)以上跳ね飛ばされた、バイクとライダーが離れているなど。その他では、機械器具に体幹部が挟まれた、6m以上からの墜落、頚部から鼠径部までの鋭的損傷など
【はじめに】年間約4万人が外傷で亡くなっている。その中には、上手くすれば、死ななかった人がおり、これを「防ぎ得た外傷死(PTD)」と呼ぶ。2002年の調査では、38.9%が防ぎ得た外傷死の可能性があるとされた。翻って、米国ではどうなのだろうか?
- 1960年代後半にPTDは25.6%~51.5%を占めていた。
- 1976年2月 整形外科医Jim Stynerの飛行機が、ネブラスカ州の玉蜀黍畑に墜落。本人は重傷、妻は即死、三人の子供は重傷、一人の子供は軽傷。田舎の病院では、納得の行く医療が施されなかった。→システムの問題!
- 1978年 ATLSという外傷診療のトレーニングコースが開発された。
- 1980年代後半にはPTDは0.9%~20.7%までに低下。
【外傷死の実際】
- 心・大血管損傷→現場で即死
- 致死的胸腹部外傷→搬送中から救急外来で死亡。分の単位。(Platinum Time)
- 持続的出血→手術室で死亡。時間の単位。(Golden Time)
- 敗血症、多臓器不全→ICUで死亡。日~週の単位
ロード&ゴー「現場で生命予後に関係のない観察・処置は省略し、5分以内に現場を出発、受傷から1時間以内に適切な医療機関へ搬送すること」
- 現場活動:状況評価、感染防御、携行資機材確認、二次災害予防・安全確保、応援要請・傷病者数確認、受傷機転の把握
- 初期評価(15秒以内):頚椎保護、意識と気道の評価、呼吸の評価、循環の評価、外出血
- 全身観察(上記と合わせて2分以内):全身(頭部-大腿-四肢→背部)の視診と触診
- 車内活動:病院選定と連絡、保温、詳細観察、継続観察
Primary Survey(生理学的評価)TAF3XMAPDを除外することで安定化させる。
- Tamponade(心タンポナーデ)
- Airway obstruction(気道閉塞)
- Flail chest(動揺胸郭)
- open pneumothoraX(開放性気胸)
- tension pneumothoraX(緊張性気胸)
- Massive hemothoraX(大量血胸)
- Abdominal hemorrhage(腹腔内出血)
- Pelvic fracture(骨盤骨折)
- 切迫するD (GCS≦8、GCS2点以上の低下、ヘルニア徴候)
- Airway:気道閉塞→挿管→輪状甲状靱帯穿刺→輪状甲状靱帯切開
- Breathing:首がネック!心臓・肺と脳の交通の要。気管偏位、頚静脈怒張、皮下気腫、片側胸郭挙上があれば、緊張性気胸。動揺性胸郭の場合は、挿管の上、陽圧呼吸。
- Circulation:皮膚、脈、外出血確認。ショックは血圧低下より皮膚冷汗湿潤が先行する。ルート、レントゲン、FAST。ルートは両肘に2本確保。乳酸リンゲル1−2L どんと行き輸液に対する反応を見る。反応しなければ、40%以上の出血があり、気管挿管の適応。乳酸リンゲルが3L になるまでに MAP を開始する。FASTとは、Focused Assessment of Sonography for Traumaの略で次の確認、1)上腹部で心嚢水、2)右側腹部でモリソン窩と右胸水、3)左側腹部で脾周囲と左胸水、4)下腹部でダグラス窩。胸部 X 線では、大量血胸と多発肋骨骨折の、骨盤 X 線では明らかな骨盤骨折のチェックのみ。
- Dysfunction of CNS 「GCS、E2V4M4、瞳孔4ミリ、4ミリありありです。四肢運動 OK です。」
- Exposure and Environmental Control(脱衣と体温管理)
- 「切迫する D」がある時は ここでCT 撮影。VSが安定しないうちはCTは死のトンネル。
- AMPLE を聴取する。Allergy、Medication、Past history/Pregnancy、Last meal、Event
Secondary survey(解剖学的評価)PATBED2Xを除外
- Pulmonary contusion(肺挫傷)
- Aortic rupture(大動脈裂傷)
- Tracheobronchial rupture(気管気管支裂傷)
- Blunt cardiac contusion(心挫傷)
- Esophageal rupture(食道裂傷)
- Diaphragmatic rupture(横隔膜裂傷)
- Pneumothorax(気胸)
- Hemothorax(血胸)
- 頚部:3R 撮影。まず能動的に左右に動かしてもらい次に座位で前後屈し、痛みがなければカラーをはずす。痛みを伴うよ うならカラーを継続し後で CT,MRI などを撮る。脊髄損傷を疑った場合は、発症8時間以内に methylprednisolone(ソルメドロール)を15分で30mg/kg投与し45分休薬後、次の23時間に5.4mg/kg/hを投与する。 脊髄損傷の内科的治療で evidence があるのはこれだけである。
- 胸部:心電図、胸部レ線の精密読影。
- 腹部:FAST を繰り返し、NGtube 挿入。必要なら造影 CT。
- 骨盤:骨盤 X 線を詳細観察。X線で骨折なければ恥骨、腸骨、仙腸関節の圧痛確認。
- 会陰部:「外尿道口からの出血なし、会陰皮下出血なし」Foley カテ挿入。直腸指診を行い「肛門括約筋緊張よし、粘膜断裂なし、骨片触知なし、前立腺高位浮動なし、出血なし」
- 下肢、上肢:診察。
- 背部:log roll で行い背面観察。損傷側を上にすること。頭部保持者の号令で「1、2、3」。この時リーダーの腕が隣の者の腕の下にならないように注意。片腕をフリーにして背部が触診できるように。不安定型骨盤骨折がある場合は、flat lift でそのまま上へ持ち上げて。
- 神経:「GCS8点、瞳孔 4 ミリ4ミリありあり、四肢の動きよし」
【終わりに】
自殺未遂、スポーツ(競技、クラブ活動)、犯罪(暴行、虐待)、労働災害などで受傷し、歩いてくる高エネルギー外傷患者に注意。
- ワケあり患者さんが少なくないので、意図的な嘘があり得る。
- 意図的ではなくとも、主訴が死因と関連がなく、結果的に騙される。
- "talk-and-die"患者、遺族の憤慨・医療従事者の悔恨。
参考図書
- JATEC 「外傷初期診療ガイドラインJATEC」
- JPTEC 「外傷病院前救護ガイドラインJPTEC」
- JNTEC 「外傷初期看護ガイドラインJNTEC」
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