今回は、医療コンフリクト・マネジメントの学習会でした。
裁判以外での紛争解決をADR(Alternative Dispute Resolution)と称するが、弁護士主導の調停では、賠償金の折り合いは付けられても、患者側、病院側双方に心理的なわだかまりが残ってしまう。そこで、弁護士法第72条にある調停の独占業務条項への抵触を避けるため、病院職員による示談交渉という形式をとりつつ、実際には、不偏性を保ち、両者をエンパワーする医療メディエータによる対話の促進が、メディエーションである。医療メディエーション・スキルの背景には、社会構成主義、ナラティブ・アプローチ、ソーシャルワークの理論がある。「日本メディエータ協会」では、その育成に力を注ぎ、現在全国で1、561名の医療メディエータがいるとのこと。
以上の内容を概説頂いた上で、誠実に対応したが裁判に至ってしまったケース、メディエーションスタイルはとらなかったが、メディエーションスキルを駆使したケース、メディエーションスタイルをとったケースのご紹介を頂いた。
2011年8月10日水曜日
2011年6月29日水曜日
Quality Indicator
今回は、第125回北海道診療情報管理研究会に参加された先生から、聖路加国際病院院長福井次矢先生の御講演「QIを用いた医療の質改善の試み」の報告でした。聖路加国際病院におけるQIの成果は発行され、Amazonでも入手でき、同病院のサイト "[医療の質]を測る"で公開されています。
医療の質:DonabedianのSPOモデルが1966年に提唱される。
- Structure (resources and administration)
- Process (culture and professional co-operation)
- Outcome (competence development and goal achievement)
- 患者満足度(外来患者)
- 患者満足度(入院患者)
- 死亡退院患者率
- 入院患者の転倒・転落発生率、損傷発生率
- 手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
- 退院後6週間以内の緊急再入院率
- 予防可能であった可能性のある静脈血栓塞栓症の発生率、手術患者における入院中の静脈血栓塞栓症の発生率
- 褥瘡発生率
- 糖尿病患者の血糖コントロール、HbA1c<7.0% (HbA1c (JDS) <6.6%)
- 急性心筋梗塞患者のアスピリン投与率
- 手術患者における静脈血栓塞栓症の予防行為実施率
上記のように公開するだけでも、ホーソン効果、ベンチマーキングとしての効果などから医療の質の向上が期待できるが、さらには個人・組織の行動変容のための方略が必要となる。例えば、マニュアルの改訂、勉強会や研修会、フィードバック、P4P(pay-for-performance)など。しかし、ネガティブなP4Pは米国では医療現場に影を落としているらしい。
Labels:
SM
2011年3月11日金曜日
SEA「 Miss Basedowのときめき」
今回は、研修医の先生のSignificant Event Analysisの発表でした。
What happened?
60歳女性が咳を主訴に来院。特異的な徴候もなく、家族が風邪を引いているということから上気道炎と診断し処方。5ヶ月後、Basedow病であることが判明。カルテを見直すと脈拍125bpmの記載があった。
Why did it happen?(Five Whys)
- 洞性頻脈を軽視した。
- 診断の早期閉鎖をしてしまった。
- 甲状腺疾患の有病率を低く見積もっていた。
- 甲状腺の診察をしなかった。
- 甲状腺の診察を主観的なものと認識していた。
What have you learned?
洞性頻脈について
定義 >100bpm = 平均+2SD
鑑別診断
- 循環血液量の不足、tilt test陽性:
- 頻脈以外の随伴症状を伴う疾患:低酸素、発熱、心不全など
- 内分泌系疾患:甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫など
- その他:恐怖、怒り、不安、薬物など
甲状腺疾患の有病率(医事新報3740:22,1995)
- Basedow病:男性 0.18%、女性 0.32%
- 橋本病:男性 2.7%、女性 11.8%
甲状腺機能亢進症の症状
- 頻脈(>90bpm):感度 80%、特異度 82%、陰性尤度比 0.2
- 甲状腺腫:感度 93%、特異度 59%、陰性尤度比 0.1
- 眼瞼後退(Dalrymple徴候):感度 34%、特異度 99%、陽性尤度比 31.5
- 眼瞼遅延(von Graefe徴候):感度 19%、特異度 99%、陽性尤度比 17.6
甲状腺の診察法
- 視診:首を進展して、横から見る。
- 触診:"rule of thumb"、嚥下運動をさせる。
- 甲状腺の有無のCohenのκ係数は、0.77でLandisとKochの基準ではかなりの一致を示す。
What have you changed?
- 安静時の頻脈をみたとき重症度によって分類する。
- 重症でない場合、事前確率の高さから、甲状腺疾患は必ず念頭に置く。
- 甲状腺は必ず診察。機能亢進疑い、甲状腺腫がなければ可能性は下がる。
- TSHをスクリーニングするかどうかは諸説あるが、年齢によっては検討。
Clinical Pearl:
手首と首の触診を見縊るな。
References
2011年2月9日水曜日
チームSTEPPS
チームSTEPPSとは、Team Strategies and Tool to Enhance Performance and Patient Safety の略で、2005年にアメリカの航空業界のCRM(Crew Resource Management)と軍隊のオペレーション、原子力機関などのHROs(High-Reliability Organizations)に関する研究をもとにスタートされたチーム医療トレーニングプログラムのこと。日本へは、国立医療科学院安全科学室長種田憲一郎氏が導入し、2009年からこのプログラムを翻訳して国立保健科学院でセミナーを開始している。
2011年1月に開催された日本医療メディエータ協会の年次総会で取り上げられ、今後医療安全の分野で広がっていくと思われるが、総会ではさわりの紹介に限られ、内容について詳細は明らかにされず、有料セミナーの内容は公開されていない。名称の宣伝とセミナー参加への誘導が現時点での戦略のようだ。
以前から民医連の施設ではFaculty Developmentにチーム医療が挙げられ、実践されてきたが、具体的なエビデンスに基づいたり、発信する機会が少なかった。エビデンスに裏付けられて構成されているチームSTEPPSは、我々の実践を省みて成文化するモデルになり得る。
まずは、AHRQ初代所長Dr. John Eisenbergの言葉、"Improving patient safety is a team sport." (患者の安全を改善するのはチームスポーツである。)をチームメンバーが肝に銘じる必要がある。そして、自分を含めメンバーの能力、状況を目配り(Situation monitor)し、思いやること(Mutual support)、声掛け(Communication)をすること、それにリーダーシップを加えた4つのコンピテンシーがチームSTEPPSの核となっている。
1.リーダーシップ
安全文化醸成を根付かせる8つのステップ
」による。ペンギン達が、住んでいる氷山(Iceberg)が溶け始める危機に瀕する。この危機をペンギン達が乗り越えていく物語。医療事故の話では、ハインリッヒの法則をもとにした氷山モデルが語られることが多いが、我々の仕事はこの氷山を溶かし小さくすることなのでした。ペンギンさん達には申し訳ないことですが…
2011年1月に開催された日本医療メディエータ協会の年次総会で取り上げられ、今後医療安全の分野で広がっていくと思われるが、総会ではさわりの紹介に限られ、内容について詳細は明らかにされず、有料セミナーの内容は公開されていない。名称の宣伝とセミナー参加への誘導が現時点での戦略のようだ。
以前から民医連の施設ではFaculty Developmentにチーム医療が挙げられ、実践されてきたが、具体的なエビデンスに基づいたり、発信する機会が少なかった。エビデンスに裏付けられて構成されているチームSTEPPSは、我々の実践を省みて成文化するモデルになり得る。
まずは、AHRQ初代所長Dr. John Eisenbergの言葉、"Improving patient safety is a team sport." (患者の安全を改善するのはチームスポーツである。)をチームメンバーが肝に銘じる必要がある。そして、自分を含めメンバーの能力、状況を目配り(Situation monitor)し、思いやること(Mutual support)、声掛け(Communication)をすること、それにリーダーシップを加えた4つのコンピテンシーがチームSTEPPSの核となっている。
1.リーダーシップ
- リソースマネジメント:チーム内で作業量の偏りがないように調整する。
- 委任(Delegation):1)何を 2)誰に 3)明確な目標 4)フィードバックの指示(GTDの"Do it, delegate it, defer it or drop it."のDelegateの具体的方法)
- 業務前・中・後に行う打ち合わせ、進捗確認、振り返りのミーティング(業務中のハドルは、アメフトの試合途中で円陣を組んで行う作戦の打ち合わせの意味)
- コンフリクトの解決
- 状況認識:STEP(Status of the patient, Team Members, Environment, Progress toward goal)
- 相互モニター:I'M SAFE(Illness, Medication, Stress, Alcohol and Drug, Fatigue, Eating and Elimination)
- 作業支援
- フィードバック
- 患者擁護と主張
- 2回チャレンジルール:主張は退けられても2回はすることが個人の責任。
- 主張の強度:CUS(Concern, Uncomfortable, Safe issue)
- 角の立たない進言の方法:DESCスクリプト(Describe, Express, Suggest, Consequence)
- 協同
- 緊急情報の伝達:S-BAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation and Request)
- コールアウト(声出し確認)
- チェックバック(再確認)
- 引き継ぎ:I PASS the BATON(Introduction, Patient, Assessment, Situation, Safety, Background, Actions, Timing, Ownership, Next)
安全文化醸成を根付かせる8つのステップ
- チームに緊迫感をつくる
- 誘導チームをつくる
- ビジョンと戦略を練る
- メンバーの理解と受け入れを促す
- 他者へのエンパワメントを図る
- 短期的な成功を獲得する
- 減速させないで継続する
- 新しい組織文化を醸成する
Eisenberg氏の言葉で始まり、Icebergの話で終わるレジメでした。
参考文献
- 医療安全 7(2), 38-44, 2010-06 チームとしてのよりよいパフォーマンスと患者安全を高めるためのツールと戦略 (チームSTEPPS 日本の医療施設でどう応用するか?)
- エキスパートナース 2010年11月号 第2ステージに入った医療安全対策最前線 輸液・感染リスクマネジメントの具体的進め方[第2回] 医療安全の推進・質の向上に成果を上げる“チームSTEPPS”と有効なコミュニケーション・ツール
- Medsafe.Net TeamSTEPPS チームのパフォーマンスを高めるコミュニケーションの向上
Labels:
SM
2010年7月28日水曜日
医療紛争と謝罪
医療メディエーター協会北海道支部主催のメディエーターベーシックコースのファシリテーターを務められた先生から、雑誌「医療安全」の連載「医療紛争と謝罪“Sorry Works Movement”」をもとに、謝罪に関する基礎を講義頂いた。
謝罪とは何か?
- プロセスとしての謝罪=謝罪行為+謝罪受容
- 謝罪行為には、責任承認、共感表明の2種類がある。
- 謝罪行為には、「受容せよ」という要求のニュアンスが含まれてしまう。
- 謝罪受容には、心理的安定、謝罪行為と向き合う構えが必要なので、時間を要する。
- 共感表明の謝罪が、責任承認として誤解されることがある。
アメリカにおける情報開示と謝罪促進の動向
- 1986年、マサチューセッツ州を嚆矢に"Sorry law"が普及。
- 2005年、"Sorry Works! Coalition"の発足
- 2006年、 Massachusetts Coalition for the Prevention of Medical Errorsが、「医療事故:真実説明・謝罪マニュアル: 本当のことを話して、謝りましょう」を公開。日本語では、「医療事故:真実説明・謝罪普及プロジェクト」に全訳がある。
謝罪が訴訟に及ぼす影響
- 訴訟において謝罪が取り上げられることは少ない。
- 慰謝料が減額されることがある。
- 責任承認にあたる謝罪では、過失を証明する証拠とされることがある。
Labels:
SM
2009年11月11日水曜日
中毒のいろいろ
ケース1:テングダケ
公園で採った幻覚キノコ食べ、一時意識不明 北海道 2008年9月9日産経新聞平成1年から平成20年8月までの道の統計では、ツキヨタケ,クサウラベニタケ,テングタケの3種で3分の2を占めるが、死亡例はない。死亡例は、タマゴタケモドキの4例中3例。数多いキノコについては、下記のように食べてから発症までの時間と症状で下記の5群に分類しておくと便利。
北海道は9日、札幌市厚別区内の公園で採った毒キノコのテングタケを食べた北広島市の70代の男性が一時意識不明となる食中毒を起こしたと発表した。男性は現在も入院中だが、意識は回復し快方に向かっているという。
道食品衛生課によると、男性は6日、公園の脇に生えていたテングタケを採り、自宅で油いためにして食べた。約30分後に腹痛や下痢などを起こし、丸1日、意識不明になったという。
テングタケは夏から秋にかけて発生する毒キノコで、食べると幻覚などの症状が出る。道内では平成17年9月、岩内町で別の食用キノコと間違えて食べた3人が嘔吐(おうと)などの食中毒を起こした。
道は「キノコ狩りの季節だが、知らないキノコは食べないでほしい」と注意を呼び掛けている。
第1群:食後6時間以上で、激しい下痢・腹痛、肝・腎臓障害をもたらす致死性中毒
アマニチンやファロイジンンなどの環状ペプチドによる中毒: ドクツルタケ、シロタマゴテングタケ、タマシロオニタケ、タマゴテングタケ、タマゴタケモドキ、コテングタケモドキ 、フクロツルタケ、ドクアジロガサ(コレラタケ)、ニセクロハツ第2群:食後20分~2時間後で、主に悪酔い症状・発汗などの自律神経症状
モノメチルヒドラジンによる中毒: シャグマアミガサタケなど
コプリンによりアンタビュース様中毒: ヒトヨタケ、ホテイシメジ第3群:食後20分~2時間後で、幻覚・精神錯乱状態などの中枢神経症状
ムスカリン中毒: アセタケ類とカヤタケ類
イボテン酸-ムッシモ-ルによる精神錯乱(せん妄)状態: ベニテングタケ、テングタケ第4群:食後30分~ 3時間で、消化器症状
シロシビン-シロシンによる幻覚を伴った中毒: ヒカゲシビレタケ、オオシビレタケ、センボンサイギョウガサ、アオゾメヒカゲタケ、ワライタケ
クサウラベニタケ、ツキヨタケ、カキシメジ、マツシメジ、コガネホウキタケ、ハナホウキタケ、ニガクリタケ、ドクベニタケ、ドクヤマドリ、オオワカフサタケ、オオシロカラカサタケ、ドクカラカサタケ、オオワライタケ、ニセショウロ類など。第5群:食後4~5日で,手足の先,ペニスのみが赤く腫れ,激痛が1か月以上持続
ドクササコ Clitocybe acromelalgaケース2:ツブ
72歳女性、買ってきたツブをバーベキューをしたときに焼いて、そのまま食べた。めまい、嘔気を訴え、居合わせた知人に連れられ、来院。エゾバイ科のものは唾液腺に弱い毒(テトラミン)を含むため、唾液腺を除かないまま多量に食べると中毒してしまう。命に関わることはまずないが、通常30分から2時間後に、副交感神経刺激と運動神経末梢麻痺、たとえば酒に酔ったような症状、視力低下、散瞳、頻脈等を起こすので注意が必要である。テトラミンは熱に強く、水溶性。調理しても毒性は弱まらず、他の可食部や煮汁にも移行する。映画武士の一分では、毒味役の三村新之丞(木村拓哉)が失明するが、これはツブ貝の毒にあたったことになっている。
ケース3:スイセン
スイセンをニラと間違え食中毒症状 2006年5月16日日刊スポーツ中毒は初期に強い嘔吐があり摂取物の大半が吐き出されるため症状が重篤に到ることは稀であるが、鱗茎を浅葱(アサツキ)と間違えて食べ死亡した例がある。有毒植物で毒成分はリコリンとシュウ酸カルシウムなど。全草が有毒だが、鱗茎に特に毒成分が多い。スイセンの致死量は10gである。食中毒症状と接触性皮膚炎症状を起こす。葉がニラととてもよく似ており、ニラと間違えて食べ中毒症状を起こすという事件が時々報告・報道される。ニラとの大きな違いは、葉からの臭いが無いことと、鱗茎(球根)があること。
北海道食品衛生課は16日、北海道美瑛町で、スイセンをニラと間違えて食べた女性9人が、嘔吐や頭痛などの食中毒症状を訴え一時入院したと発表した。全員ほぼ回復しているという。
同課によると15日午前6時半ごろ、美瑛町にある会社の寮の庭で栽培していたニラの近くにあったスイセンを、20代から30代の女性従業員が卵とじスープにして食べた。
スイセンは球根の部分以外はニラと似ている。スイセンにはリコリンという腹痛や下痢などの中毒症状を引き起こす物質が含まれており、道が注意を呼びかけた。
ケース4:アセトアミノフェン
「救急外来でのキケンな一言―トラブル事例に学ぶ診療のピットフォールとTips」から日本中毒情報センターでは、年間約600件のアセトアミノフェンに係わる誤飲や中毒の問い合わせを受け、その約1割が、自殺目的などの大量摂取の問い合わせだそうです。解毒薬は、千寿製薬のアセチルシステイン内用液 17.6%「センジュ」)がある。アセトアミノフェン過量摂取後24時間以内で、1)血漿中アセトアミノフェン濃度が、アセチルシステイン投与推奨ラインよりも上の患者、あるいは 2)血漿中アセトアミノフェン濃度が測定されていない場合、推定アセトアミノフェン摂取量が成人で7.5g以上、小児で140mg/kg以上の患者、アセチルシステインを初回に140mg/kg、その4時間後から70mg/kgを4時間毎に17回、経口あるいは経胃・経十二指腸投与する。摂取後24〜48 時間における予後不良の指標には,適切な蘇生法後にpH <> 3,血清クレアチニン値2.6以上,肝性脳症の昏睡度Ⅲ(錯乱および傾眠)またはⅣ(昏迷および昏睡),低血糖,血小板減少などがある。
23歳女性がアルコールと感冒薬を服用して自殺を図った。感冒薬の内服量からアセトアミノフェンは最大で8gと推定された。受診時の血液検査では肝機能障害も認められなかった。
受診時は、軽度の意識障害を認めていたが、輸液のみで意識は清明に回復し、症状は軽度の嘔気を認めるのみ、「もう二度とこんなことをしません」と後悔の言葉を述べ帰宅を希望した。研修医は「今は元気そうなので問題ないだろう」と判断し、制吐薬を処方し両親に慎重な観察をお願いして帰宅させた。3日後に全身倦怠感を主訴に再診した高度の肝機能障害を呈していた。
いづれの症例もルーチンの問診では、原因を聞き洩らす可能性がある。そういう意味で、中毒は、患者の語りに耳を傾けることが安全な医療に直結する分野であると言えるかもしれない。
2009年7月28日火曜日
後腸骨稜からの骨髄穿刺
日本血液学会から6月4日付けで「成人に対する骨髄穿刺の穿刺部位に関する注意(pdf)」なる文書が出ておりました。骨髄穿刺は、基本的に、後腸骨稜から行うようにとの勧告です。個人的には、胸骨と前腸骨稜からの経験しかないので手技に関してYouTube動画を捜してみました。
2009年7月14日火曜日
高エネルギー外傷の飛び込みに気をつける。
【キーワード】 高エネルギー外傷、PTD、ロード&ゴー、TAF3XMAPD、PATBED2X
【高エネルギー外傷のMechanism】
交通事故では、同乗者の死亡、車から放り出された、搭乗空間が高度に変形、救出に20分以上要した、車の横転、5m(7歩分)以上跳ね飛ばされた、バイクとライダーが離れているなど。その他では、機械器具に体幹部が挟まれた、6m以上からの墜落、頚部から鼠径部までの鋭的損傷など
【はじめに】年間約4万人が外傷で亡くなっている。その中には、上手くすれば、死ななかった人がおり、これを「防ぎ得た外傷死(PTD)」と呼ぶ。2002年の調査では、38.9%が防ぎ得た外傷死の可能性があるとされた。翻って、米国ではどうなのだろうか?
【外傷死の実際】
ロード&ゴー「現場で生命予後に関係のない観察・処置は省略し、5分以内に現場を出発、受傷から1時間以内に適切な医療機関へ搬送すること」
Primary Survey(生理学的評価)TAF3XMAPDを除外することで安定化させる。
Secondary survey(解剖学的評価)PATBED2Xを除外
【終わりに】
自殺未遂、スポーツ(競技、クラブ活動)、犯罪(暴行、虐待)、労働災害などで受傷し、歩いてくる高エネルギー外傷患者に注意。
参考図書
【高エネルギー外傷のMechanism】
交通事故では、同乗者の死亡、車から放り出された、搭乗空間が高度に変形、救出に20分以上要した、車の横転、5m(7歩分)以上跳ね飛ばされた、バイクとライダーが離れているなど。その他では、機械器具に体幹部が挟まれた、6m以上からの墜落、頚部から鼠径部までの鋭的損傷など
【はじめに】年間約4万人が外傷で亡くなっている。その中には、上手くすれば、死ななかった人がおり、これを「防ぎ得た外傷死(PTD)」と呼ぶ。2002年の調査では、38.9%が防ぎ得た外傷死の可能性があるとされた。翻って、米国ではどうなのだろうか?
- 1960年代後半にPTDは25.6%~51.5%を占めていた。
- 1976年2月 整形外科医Jim Stynerの飛行機が、ネブラスカ州の玉蜀黍畑に墜落。本人は重傷、妻は即死、三人の子供は重傷、一人の子供は軽傷。田舎の病院では、納得の行く医療が施されなかった。→システムの問題!
- 1978年 ATLSという外傷診療のトレーニングコースが開発された。
- 1980年代後半にはPTDは0.9%~20.7%までに低下。
【外傷死の実際】
- 心・大血管損傷→現場で即死
- 致死的胸腹部外傷→搬送中から救急外来で死亡。分の単位。(Platinum Time)
- 持続的出血→手術室で死亡。時間の単位。(Golden Time)
- 敗血症、多臓器不全→ICUで死亡。日~週の単位
ロード&ゴー「現場で生命予後に関係のない観察・処置は省略し、5分以内に現場を出発、受傷から1時間以内に適切な医療機関へ搬送すること」
- 現場活動:状況評価、感染防御、携行資機材確認、二次災害予防・安全確保、応援要請・傷病者数確認、受傷機転の把握
- 初期評価(15秒以内):頚椎保護、意識と気道の評価、呼吸の評価、循環の評価、外出血
- 全身観察(上記と合わせて2分以内):全身(頭部-大腿-四肢→背部)の視診と触診
- 車内活動:病院選定と連絡、保温、詳細観察、継続観察
Primary Survey(生理学的評価)TAF3XMAPDを除外することで安定化させる。
- Tamponade(心タンポナーデ)
- Airway obstruction(気道閉塞)
- Flail chest(動揺胸郭)
- open pneumothoraX(開放性気胸)
- tension pneumothoraX(緊張性気胸)
- Massive hemothoraX(大量血胸)
- Abdominal hemorrhage(腹腔内出血)
- Pelvic fracture(骨盤骨折)
- 切迫するD (GCS≦8、GCS2点以上の低下、ヘルニア徴候)
- Airway:気道閉塞→挿管→輪状甲状靱帯穿刺→輪状甲状靱帯切開
- Breathing:首がネック!心臓・肺と脳の交通の要。気管偏位、頚静脈怒張、皮下気腫、片側胸郭挙上があれば、緊張性気胸。動揺性胸郭の場合は、挿管の上、陽圧呼吸。
- Circulation:皮膚、脈、外出血確認。ショックは血圧低下より皮膚冷汗湿潤が先行する。ルート、レントゲン、FAST。ルートは両肘に2本確保。乳酸リンゲル1−2L どんと行き輸液に対する反応を見る。反応しなければ、40%以上の出血があり、気管挿管の適応。乳酸リンゲルが3L になるまでに MAP を開始する。FASTとは、Focused Assessment of Sonography for Traumaの略で次の確認、1)上腹部で心嚢水、2)右側腹部でモリソン窩と右胸水、3)左側腹部で脾周囲と左胸水、4)下腹部でダグラス窩。胸部 X 線では、大量血胸と多発肋骨骨折の、骨盤 X 線では明らかな骨盤骨折のチェックのみ。
- Dysfunction of CNS 「GCS、E2V4M4、瞳孔4ミリ、4ミリありありです。四肢運動 OK です。」
- Exposure and Environmental Control(脱衣と体温管理)
- 「切迫する D」がある時は ここでCT 撮影。VSが安定しないうちはCTは死のトンネル。
- AMPLE を聴取する。Allergy、Medication、Past history/Pregnancy、Last meal、Event
Secondary survey(解剖学的評価)PATBED2Xを除外
- Pulmonary contusion(肺挫傷)
- Aortic rupture(大動脈裂傷)
- Tracheobronchial rupture(気管気管支裂傷)
- Blunt cardiac contusion(心挫傷)
- Esophageal rupture(食道裂傷)
- Diaphragmatic rupture(横隔膜裂傷)
- Pneumothorax(気胸)
- Hemothorax(血胸)
- 頚部:3R 撮影。まず能動的に左右に動かしてもらい次に座位で前後屈し、痛みがなければカラーをはずす。痛みを伴うよ うならカラーを継続し後で CT,MRI などを撮る。脊髄損傷を疑った場合は、発症8時間以内に methylprednisolone(ソルメドロール)を15分で30mg/kg投与し45分休薬後、次の23時間に5.4mg/kg/hを投与する。 脊髄損傷の内科的治療で evidence があるのはこれだけである。
- 胸部:心電図、胸部レ線の精密読影。
- 腹部:FAST を繰り返し、NGtube 挿入。必要なら造影 CT。
- 骨盤:骨盤 X 線を詳細観察。X線で骨折なければ恥骨、腸骨、仙腸関節の圧痛確認。
- 会陰部:「外尿道口からの出血なし、会陰皮下出血なし」Foley カテ挿入。直腸指診を行い「肛門括約筋緊張よし、粘膜断裂なし、骨片触知なし、前立腺高位浮動なし、出血なし」
- 下肢、上肢:診察。
- 背部:log roll で行い背面観察。損傷側を上にすること。頭部保持者の号令で「1、2、3」。この時リーダーの腕が隣の者の腕の下にならないように注意。片腕をフリーにして背部が触診できるように。不安定型骨盤骨折がある場合は、flat lift でそのまま上へ持ち上げて。
- 神経:「GCS8点、瞳孔 4 ミリ4ミリありあり、四肢の動きよし」
【終わりに】
自殺未遂、スポーツ(競技、クラブ活動)、犯罪(暴行、虐待)、労働災害などで受傷し、歩いてくる高エネルギー外傷患者に注意。
- ワケあり患者さんが少なくないので、意図的な嘘があり得る。
- 意図的ではなくとも、主訴が死因と関連がなく、結果的に騙される。
- "talk-and-die"患者、遺族の憤慨・医療従事者の悔恨。
参考図書
- JATEC 「外傷初期診療ガイドラインJATEC
」
- JPTEC 「外傷病院前救護ガイドラインJPTEC
」
- JNTEC 「外傷初期看護ガイドラインJNTEC
」
登録:
コメント (Atom)